日本泌尿器科學會雑誌
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透過型電顕による膀胱腫瘍悪性度分類の試み
長山 忠雄宮内 武彦桑原 竹一郎中島 陽子
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1984 年 75 巻 12 号 p. 1890-1895

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抄録

膀胱腫瘍の治療適応の決定は, 種々の方法で推測した腫瘍浸潤度に基づいて主になされているが, 現在の癌治療の原則からすると, 浸潤度よりも腫瘍の悪性度に基づいてなされるべきであろう. 即ち, 浸潤度が浅くても, 腫瘍の悪性度が高けれぼ, 根治療法の対象とすべきであると考える. しかし, 現在, 膀胱腫瘍の生物学的悪性度を正確に判定する適切な方法はない。我々は, 術前に経尿道的に採取した小組織片の透過型電顕による検索を, 臨床的良性群14例と臨床的悪性群14例の計28例について実施し, 電顕像による腫瘍の悪性度分類を試み, 同時に実施した光顕的組織分類と比較検討した.
電顕像のうち, i) 構造異型の程度, ii) 腫瘍細胞が基底層を越えて増生している像の有無, iii) 腺癌様あるいは扁平上皮癌様分化傾向の有無, iv) 細胞質小器管の発達の程度, v) mitochondria, vi) 核小体の発達程度, についての評価を数値化し, 3群に分け電顕学的分類 (以下EM分類) とした.
この結果, 臨床的悪性群は全例EM分類のIII群に属し, EM分類は腫瘍の臨床像を良く反映していた.

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