日本泌尿器科學會雑誌
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急性期の尿路管理法の相違よりみた頚髄損傷患者の治療成績
安田 耕作村山 直人山城 豊伊藤 晴夫島崎 淳服部 孝道並木 徳重郎香村 衡一村上 信乃
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1984 年 75 巻 12 号 p. 1896-1902

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抄録

2年以上経過観察できた外傷性頚髄損傷患者111名に急性期の尿路管理法として採用した無菌的持続導尿法と非無菌的持続導尿法での治療成績を比較検討した.
留置期間が3カ月以内ですんだものは無菌的持続導尿群で55名中51名92.7%, 非無菌的持続導尿群では56名中44名78.6%であり, 無菌的持続導尿法の方が, 留置期間は短い傾向にあった.
尿路合併症, 即ち, 副睾丸炎, 尿路結石及び膀胱尿管逆流は2方法間に有意の差はなかったが, 最後の検査で尿細菌陰性者は, 無菌的持続導尿法の方が有意に多かった (p<0.05).
死亡は9名であった. 無菌的持続導尿群は1名 (1.8%) であり肺癌死であった. 非無菌的持続導尿群は8名 (14.3%) で, その死因は, 胃出血2名, 脳出血2名, 敗血症1名, 自殺1名, 肺炎1名と直腸癌1名であった. このうち, 胃出血2名及び脳出血2名は, 自律神経過反射を長く罹っていた症例であることから,, 尿路管理の失敗がその原因と考えられる. 更に, Lapides 法の膀胱痩を施行した自殺症例及び副睾丸炎と尿道膿瘍より敗血症を起こし死亡した症例を加えると, 非無菌的持続導尿群の56名中6名 (10.7%) が尿路管理の失敗によるものと考えられる. 非無菌的持続導尿法での尿路管理の失敗による死亡数は, 無菌的持続導尿法の場合に比較し有意に多かった (p<0.05). 尚両群とも腎機能障害をきたした症例はなかった.
以上のことより, 無菌的持続導尿法が非無菌的持続導尿法より優れていることを示すと考えた.

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