1984 年 75 巻 12 号 p. 1903-1910
ヒト腎細胞癌のヌードマウス可移植性腫瘍3株を樹立し, その基礎的特性について検討を行った. ヒト腎細胞癌13症例のヌードマウスへの移植実験を行った結果, 移植継代成功率は3例 (23.1%) であり, それらをJRC 1, JRC 9, JRC 11株と命名した. これら3株は, それぞれ10代, 11代, 11代継代しており, 増殖曲線をみると, 各継代株間で増殖率に差は認められず, すべて標準偏差内であった.
可移植継代可能であっ. た3症例は, 病理組織学的に high grade であり, 臨床的にも急速に死の転帰をとった症例であった. さらに原発腫瘍と, 移植継代組織を比較検討すると, 原発腫瘍組織のうち, より grade の高い部が移植継代されており, また継代に伴う病理組織学的変化は, ほとんどみられなかった. 腫瘍移植後のヌードマウスの体重変動をみると, slow growth の1株 (JRC 1株) を除いて, 他の2株 (JRC 9, JRC 11株) は, 移植後腫瘍が増殖するに伴い, 著明な体重減少を認め, 悪液質様状態となり死亡した.