日本泌尿器科學會雑誌
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ヌードマウス可移植性ヒト腎細胞癌による治療実験の研究
第2報: 抗癌剤の感受性試験
大西 哲郎増田 富士男
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1984 年 75 巻 12 号 p. 1911-1920

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抄録

腎細胞癌に対する抗癌剤の抗腫瘍効果を検討する目的で, すでに樹立したヌードマウス可移植性ヒト腎細胞癌3株のうち, 増殖の著しい2株(JRC 9, JRC 11株)を用いて検討した. 使用した抗癌剤は, アドリアマイシン (ADM), ビンブラスチン (VBL), VP-16, および5-FUで, 投与量はマウスまたは, ヌードマウスのLD50をもとに, すべて腹腔内投与した. 抗腫瘍効果判定には, 推計学上の効果判定に加え, 国立がんセンター分類に基づく病理組織学的変性 (grade) についても検討を行なった.
その結果, 推計学上単剤投与で抗腫瘍効果が認められたのは, ADM (1/2LD50) およびVBL (LD50) 投与ではJRC 11株に, 5-FU (1/4LD50) 投与ではJRC 9, JRC 11株に効果がみられ, 5-FUとVBL併用投与では, JRC 9およびJRC 11株にそれぞれ抗腫瘍効果がみられた. 従って, 単剤投与では, 病理組織学的差異によって抗腫瘍効果感受性が異なる結果であった.
しかし, 推計学上抗腫瘍効果が認められた株の病理組織学的検討では, grade III以上の変化をきたしたのは, JRC 11株に対する5-FUとVBL併用投与群のみで, 他の治療群ではすべて無効であった.
つまり, 推計学上の抗腫瘍効果と, 病理組織学上の抗腫瘍効果判定には差が著しく, そのことは, 臨床面でも, 推計学上の腫瘍縮少率が必ずしも抗腫瘍効果を反映しないことが推察された.

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