日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
尿流量測定に関しての1考察
新しい分析法の試み
清水 嘉門高橋 康男中井 克幸今井 強一山中 英寿永田 雅弥熊坂 文成
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1984 年 75 巻 12 号 p. 1964-1969

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抄録

下部尿路閉塞性疾患を有する患者の排尿量は少ない. 114名の患者に施行した228回の尿流量測定中186回 (82%) は, 排尿量が200ml以下であつた. 最大尿流量率 (MFR), 平均尿流量率 (AFR) は, 200~300ml以下の小排尿量においては排尿量とともに増加すると言われている. そのため, 小排尿量における正常者と下部尿路閉塞性疾患患者の尿流量率の比較は容易ではない. 我々は, MFR/Voided Time (M/T) という新しい尿流量曲線の parameter を考案した. MFR, AFR, M/Tを用いて, 正常男子30名の160回の尿流量測定と, 下部尿路閉塞性疾患患者114名の228回の尿流量測定を比較した.
200ml以下の排尿量においては, 両群ともMFR, AFRは排尿量とともに増加する. 200ml以上の排尿量においては, 正常群ではMFR, AFRはほぼ一定であつた. 疾患群では, 200ml以上の排尿量においても, MFR, AFRは排尿量とともに増加するが, 排尿量との相関は200ml以下より弱くなる. M/Tは, 全排尿量において, 正常群では0.58~3.90 (1.50±0.57), 疾患群では0.01~0.76 (0.23±0.16) の値を示した. 疾患群におけるM/Tは, 排尿量の大小にかかわらず, 排尿量との相関を認めなかつた. M/Tは, 両群間の Selectivity において, MFR, AFRより優れていた. M/Tは, 疾患群において多い小排尿量の尿流量測定において, 有用な parameter と思われる.

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