日本泌尿器科學會雑誌
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RIAによる前立腺特異抗原 (PA) 測定の臨床的評価
三木 誠町田 豊平柳沢 宗利吉田 正林山崎 春城近藤 直弥東 陽一郎高橋 知宏倉内 洋文
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1984 年 75 巻 12 号 p. 1982-1988

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抄録

著者らが開発した前立腺特異抗原 (PA) 測定用 radioimmunoassay (RIA) を用い, 正常男子33例, 女子14例, ならびに各種泌尿器科疾患々者201例を対象に血清PA値を測定した.
正常男子および女子の血清PA値のmean±2SDは, それぞれ1.95±0.664ng/mlおよび1.56±0.320ng/mlであり, 正常男子で2.7ng/mlを超えるものはなかったことより, 正常値を3.0ng/ml以下と設定した.
前立腺癌未治療例では22例中20例, 90.9%で3.0ng/ml以上の値を示した. 100ng/ml以上の値を示した例は3例あり, 最高値は, 1,107ng/mlであった. stage 別では stage A, B, C, Dにおいてそれぞれ5例中4例, 3例中3例, 4例中3例, 10例中10例が3.0ng/ml以上の値を示した. また前立腺癌治療例 (36例), 前立腺肥大症例 (65例), その他の悪性腫瘍例 (37例), 良性疾患 (41例) における陽性率はそれぞれ, 75.0%, 67.7%, 32.4%, 39.0%であった. 前立腺癌の鑑別診断という点から考えれば, 正常上限界を10ng/mlにすると好都合で, この場合前立腺癌未治療例の陽性率は77.3% (stage B以上では94.1%), 前立腺肥大症例の陽性率は12.3%となった.
前立腺癌未治療例22例の血清PA値の平均値は129.1ng/mlであり, 前立腺肥大症例65例のそれは5.25ng/mlであり, 両者間に統計学上有意差 (p<0.01) が認められた. また前立腺癌未治療例では stage が上るにつれ血清PA値の平均値も上昇する傾向が認められた.
同一血清のPA値とPAP値はよく相関した. 前立腺癌未治療例ではPA陰性でPAP陽性例はなく, PAP陰性でPA陽性例があり, このような例では, PA値の測定は経過観察の指標として臨床的に有意義であった. また前立腺に対し生検や手術などを施行すると, 血清PA値は上昇するが, 24時間以内に元の値に戻る傾向が認められた.
結局血清PA値のRIAによる測定は, 血清PAP値のRIAによる測定にほぼ匹敵する価値があり, 両者を平行して測定すれば, 片方のみの測定より, 診断, 治療効果判定, 経過観察などに有用であった.

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