日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
インターフェロン (IFN) の抗腫瘍効果に関する検討
(1) 尿路悪性腫瘍由来培養細胞に対する各種IFNの直接作用的増殖抑制効果について
早川 正道長倉 和彦中沢 和子相川 厚丸茂 健
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1985 年 76 巻 5 号 p. 734-743

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抄録

尿路悪性腫瘍由来培養細胞を用いてIFNの直接作用的増殖抑制効果とその特性について in vitro で実験を行った. 用いられたIFNはヒトIFN-α, -βおよび-γである. 実験内容: (1) 各種IFNsの単独, あるいはIFN-αと-γや抗癌剤 (ACD, BLM) との併用効果を, 各種培養細胞の増殖曲線より検討した. (2) 軟寒天培地内での colony formation に対するIFN-αの抑制効果や, (3) 標的細胞への3H-thymidine の取り込みに対する各種IFNの抑制効果 (4) 標的細胞動態におよぼすIFN-αの影響をそれぞれ検討した. 結果: IFN-αの細胞増殖抑制効果は投与量および作用時間依存性であり, IFNsはともに各種培養細胞に対して抑制効果を示したが, 特にCaki-1あるいはKU-2細胞に対して, (1) IFN-γが最も強い抑制効果を示す. (2) IFN-αの増殖抑制効果を増強する方法として, IFN-γや抗癌剤との同時併円法がある. (3) IFN-γが3H-thymidine の取り込みを明らかに抑制する. さらにIFN-αはアガロース内コロニー形成を抑制し, 細胞周期に影響をおよぼしてs期の細胞の増加とG2+M期の細胞数の減少をもたらした.
以上より, 腎腺癌を中心に尿路悪性腫瘍に対するIFNの直接的抗腫瘍効果を増強するためには, IFNとくにIFN-γをなるべく多量に長時間腫瘍組織内にとどまらせる投与経路を検討するとともに, 各種IFNsの併用, あるいはIFNと抗癌剤との併用を行うことが, 今後に必要な clinical trial と考えられた.

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