1985 年 76 巻 9 号 p. 1349-1356
ヌードマウス可移植性ヒト腎細胞癌株 (JRC1およびJRC11株) を用いて, 実験的に放射線 (8 MeVの電子線) の直接的照射効果を推計学上および病理組織学的に検討した. 照射線量は, 10Gy, 20Gy, 30Gyで, 右大腿部皮下に移植された腫瘍に1回局所照射した.
腫瘍二増殖曲線より推計学上, 放射線の効果をみると, JRC1株への10Gy照射群以外すべての治療群で有効であった. しかし, 病理組織学的に効果をみると, JRC11株に対する30Gy照射群以外, 組織学的変性が下里の分類で, grade II以下の変化しか得られなかった.
従って, 推計学上の治療効果と, 病理組織学上の治療効果間に差があることが示された. また, JRC11株の方が, JRC1株より放射線感受性が高い結果であった. この組織学的差異による放射線感受性の差は, 組織学的悪性度のより高い, growth fraction がより大きいことによるものと考えられた.
今回の検討より, 腎細胞癌に対する放射線治療も, その適応と方法によって補助療法としての有効性が示唆された.