日本泌尿器科學會雑誌
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Exponential phase および Plateau phase におけるヒト腎癌由来培養細胞KN-41の核DNA量と抗癌剤感受性に関する研究
西野 昭夫
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1368-1380

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抄録

培養癌細胞の plateau phase culture を, in vivo における癌組織の1つのモデルとして採用した. すなわちヒト腎癌由来培養細胞KN-41の plateau phase culture を設定し, その核DNA量の測定および各種抗癌剤の殺細胞効果の検討を行い, exponential phase culture におけるそれらの結果と比較した. DNA分析は顕微蛍光測定法にて行い, ヌードマウスにおけるKN-41移植腫瘍, および臨床材料からの腎癌組織もともに検討した. G1+G0 (G1/10) 分画, S分画の割合においては, plateau phase culture が exponentiai phase culture に比べ, 腎癌の in vivo のものと比較的近い値を示した. 抗癌剤感受性はコロニー形成法にて求めた. BLM, ADM, CQ, VBLおよび5-FUでは plateau phase 細胞が exponential phase 細胞に比し低感受性を示し, MMC, CDDPおよびACNUでは両 phase 間に感受性の差は認められなかった. 以上, DNA distribution から考えるとKN-41細胞において, exponential phase culture に比し plateau phase culture がより in vivo のヒト腎癌に近く, この plateau phase 細胞がいくつかの抗癌剤において exponential phase 細胞と異なる感受性を示したことより, plateau phase において抗癌剤感受性試験を行うことは臨床面からみて意義のあるものと考えられた.

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