日本泌尿器科學會雑誌
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泌尿器疾患患者における血清および尿中α1-microglobulin 活性の検討
田中 達朗鈴木 孝治津川 龍三
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1407-1412

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抄録

α1-microglobulin は1975年 Berggård らによって分離, 精製された分子量33,000の糖蛋白である. α1-microglobulin は β2-microglobulin と同様, 低分子尿蛋白のひとつとして注目をあびている. 本稿では, EIA法による α1-microglobulin 測定キットを使用し, 測定精度および種々の腎機能検査との相関を検索した. 対象は, 悪性腫瘍患者を除く36名で, 内訳は, 健康人8例, 腎移植提供者5例, 腎移植受腎者10例, 閉塞性尿路疾患患者13例であった.
結果, 1) 標準濃度溶液測定値の平均変動係数は, 7.55%であった. 2) 同時再現性の変動係数は1.71~5.66%, 平均3.43%であった. 3) 添加回収試験の回収率は95.8~106.8%, 平均102.1%であった.
4) 日差再現性の変動係数は6.97~10.56%, 平均8.41%であった. 5) 正常人の血清正常値は9.61±4.84mg/l (mean±2SD) であった. 6) 血清α1-microglobulin と血清 creatinine にr=0.68, p<0.001の相関が認められた. 7) 血清 α1-microglobulin と creatinine clearance にr=0.55, p<0.001の相関が認められた. 8) 血清 α1-microglobulin と血清 β2-microglobulin にr=0.67, p<0.001の相関が認められた. 9) 血清 creatinine と%TR α1-MGにr=0.64, p<0.001の相関が認められた.
これらの結果より, α1-microglobulin 測定は, 腎機能の指標のひとつとして有用であると思われた.

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