1985 年 76 巻 9 号 p. 1413-1418
肉眼的血尿を主訴とする58歳の男性で, 右尿管下端部の閉塞による巨大尿管と下大静脈後尿管の重複奇形のため無機能となった巨大水腎症に腎盂腫瘍を合併した極めて稀な症例を報告する.
腎盂腫瘍は母指頭大乳頭状広基性で, 萎縮した腎実質に広汎に浸潤し腎被膜まで達していた. 組織学的に腫瘍は, 一部で腎細胞癌に類似した明るく豊富な細胞質を有する細胞が密に配列していたが, 組織化学的に検索することにより, 腎盂移行上皮癌の clear cell change と診断できた.
下大静脈後尿管に合併した腎盂腫瘍としては, 本邦3例目と思われる。原発性巨大尿管と下大静脈後尿管の重複奇形の報告例は, 調べ得た限りでは, これまでになかった。
本症例の巨大尿管の原因として, 組織学的に尿管膀胱接合部の尿管弁が示唆された。