日本泌尿器科學會雑誌
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ヒトおよびラットの腎盂・腎乳頭上皮細胞の走査型および透過型電子顕微鏡による研究
柳沢 良三
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1987 年 78 巻 10 号 p. 1792-1802

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抄録

ラットおよびヒトの腎乳頭, 腎杯円蓋部, 腎盂上皮を走査型 (SEM) および透過型 (TEM) 電子顕微鏡で観察し, その微細構造を比較検討した. ラットでは腎乳頭上皮は腔面形質膜に微絨毛を持つ単層立方上皮であり, 腎盂上皮は3-4細胞層で最外, 中間, 基底層の三層を成し, 最外層細胞の腔面形質膜はSEM観察では網目模様の微小な稜を認め, TEM観察では鋸歯状で非対称性単位膜を示す移行上皮であった. 腎杯円蓋部において両上皮と両上皮の特徴を合せ持つ中間型の細胞の三者が混在していた. ヒトでは腎乳頭上皮は立方上皮から, 腎盂上皮は移行上皮から成り, 腎杯円蓋部において両上皮と両上皮の中間型の細胞が混在するなど, ラットのそれと類似していると結論された. しかし, ラットでは腎乳頭と腎杯円蓋部の上皮は1-2層と薄く, 直下に血管網が近接するのに対し, ヒトでは乳頭頂部以外は多層性の上皮であり, 血管網とは厚い間質組織で隔てられるなどの相違を認めた.
ラットとヒトの腎乳頭, 腎杯円蓋部, 腎盂上皮の共通点及び相違点を, 各上皮についてSEM, TEM対応させながら明らかにすることができた. 円蓋部における中間型の細胞を, ヒトで初めて確認した. ラットでは乳頭上皮は集合管上皮と類似した単層立方上皮から成り, 血管網が近接することから腎盂尿中の水, 電解質及び尿素が再吸収される可能性が示唆されている. ヒトでは各上皮とも多層性で厚い間質により血管網と隔てられるため再吸収の可能性は少ないと考えられた.

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