1988 年 79 巻 6 号 p. 1040-1048
腎盂尿管移行部における尿管筋層の構築様式を検討した. 1カ月から37歳の剖検材料 (12例) から, 尿管を縦方向に切開して伸展固定後, 尿管壁に平行な方向で連続切片を作製した. 三次元モルフォメトリーの方法を導入して, 筋層の三次元画像再構成を行い, 同時に筋束のベクトル表現を行った. その結果, 筋層の構築は新生児期には輪走筋主体の構造であるが, 加齢とともに縦成分が増加して斜走筋主体となり, 7歳以上では成人と同様の mesh structure を形成していた. ベクトル分布では, いずれの症例においても尿管の縦軸に対してほぼ対称性で, 加齢とともに単峰性の分布 (輪走成分主体) から二峰性分布 (斜走成分主体) へと変化し, 縦成分の増加として捉えられた. これは, 尿管の伸長に伴う変化であり, 新生児期には折り畳まれていた mesh stucture が, 成長とともに引き伸ばされた結果と推察される. 機能的には mesh structure は, bolus の形成と輪送には有利な構造と思われ, その意味からも輪から斜への構築の変化が重要である. 一方, 粘膜側に2歳頃より繊細な縦走筋群が出現し, 7歳以上では細い筋束を形成するが, 外側の斜走筋と直接の繋がりはなく, そのベクトル分布および発現時期からみて, 斜走筋とは異なる性格のものと考えられた.