日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
悪性進展を呈した乳頭状膀胱腫瘍の臨床病理所見とABH血液型同種抗原および Thomsen-Friedenrich 抗原の検討
山田 拓己福井 巌横川 正之大島 博幸
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 79 巻 6 号 p. 1049-1053

詳細
抄録

515例の表在性乳頭状膀胱移行上皮腫瘍のうち経過観察中に悪性進展 (T2以上の浸潤癌か遠隔転移) を示した38例について, 初発腫瘍の組織学的異型度と, これらの腫瘍が悪性進展までに要した期間や再発回数との関係ならびに初発腫瘍のABH血液型同種抗原, Tおよび cryptic T抗原について比較検討した. 初発腫瘍の組織学的異型度が Grade 1の3例では, 悪性進展までの期間が8年から10年以上と長く, 再発回数はこのうち2例で10回以上と多かった. Grade 2の21例では, 3年以内と短いものが11例, 4から6年を要したものが8例, および10年以上の長い経過をとるものが2例と様々であった. 再発回数も様々で, 3回以内に進展したものが12例, 4回以上の再発後に進展したものが9例であった. Grade 3の11例では9例と大部分が3年以内の短期間のうちに悪性進展した. 悪性進展までの再発回数も少なく2回以内が7例で全例5回以内であった. 初回腫瘍のABH血液型同種抗原とTおよびcryptic T抗原についてみると, ABH血液型同種抗原では組織標本が得られた16例のうち14例が陽性で, Grade 2とGrade 3の各1例のみが陰性であった. T抗原は組織標本が得られた12例全例が陽性で, Cryptic T抗原は全例が陰性であった. 以上より, 初発腫瘍におけるABH血液型同種抗原, Tおよび Cryptic T抗原の検討は悪性進展の指標になるとはいえない成績であった.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top