1977年11月から1987年4月までの約10年間に浜松医大および関連病院泌尿器科で腎細胞癌 (以下腎癌) と診断された76例のうち病理学的に確認された67例の治療成績について検討した. 対象症例67症例の内訳は, 男52例, 女15例, 年齢38歳から84歳 (平均年齢62.4歳), 患側は右側28例, 左側39例であった. Kaplan-Meier 法による全症例の1, 3, 5年生存率はそれぞれ79.8%, 64.1%, 55.5%であった. そこで予後に影響するいくつかの因子について検討した. その結果, 貧血, 血沈亢進, CRP陽性, 血清アルブミン減少, 血清α1グロブリン上昇, 超音波断層法で腫瘍が mixed pattern を示す症例の予後は不良であった. 尿路外症状を示す症例, 血漿フィブリノーゲン上昇例については, 予後不良の傾向はみられたが有意ではなかった. 病理学的検討では, 腫瘍の進展度と悪性度は予後に影響する重要な因子であったが, 腎癌の細胞型, 構築型, 浸潤増殖様式が予後因子か否かははっきりしなかった. われわれは腎癌の根治的腎摘除術後に, 化学療法 (FT207, 5-FUまたはUFT) と非特異的免疫療法 (OK-432: Picibanil) を併用した補助療法を行っているが, この補助療法は腎癌の予後改善に有用と思われた. 進行腎癌に投与された Interferon-αの生存率に対する効果については少数例のため明らかにすることはできなかった.