日本泌尿器科學會雑誌
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腎細胞癌におけるLex (SSEA-1) 抗原群の発現
腫瘍分化度及び予後との相関についての検討
福士 泰夫斎藤 誠一折笠 精一大谷 明夫
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1988 年 79 巻 6 号 p. 1090-1095

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抄録

腫瘍組織より抽出した糖鎖抗原 Difucosyl Lex (Galβ1→4〔Fucα1→3〕GlcNAcβ1→3Galβ1→4〔Fucα1→3〕GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glcβ1→1Cer) 及びその Sialosyl derivative である Sialosyl Lex (NeuAcα2→3Galβ1→4〔Fucα1→3〕GlcNAcβ→3Galβ1→4〔Fucα1→3〕GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glcβ1→1Cer) の各々に対して確立したモノクローナル抗体FH4及びFH6を用い, 腎細胞癌の連続切片に対する免疫組織染色を施行した. その結果から, 抗原の出現パターンを Group A (FH4陽性, FH6陽性), Group B (FH4陽性, FH6陰性), Group C (FH4陰性, FH6陰性) と分類し, 各 Group と, Stage, Grade, 及び予後との相関を検討した. その結果, Group と Grade には相関が認められたが, Group と Stage には相関を認めなかった. 又, 予後との相関では, Stage と Group が各々予後と相関した. 以上よりこれは Lex 抗原群は, 腎腫瘍においても分化を示す1つのパラメーターとして存在し, モノクローナル抗体を用いたこれらの免疫組織学的手法は腫瘍細胞の分化度或いは悪性度を客観的に判定し, 更には予後を予測する有用な手段となり得ると考えられた.

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