日本泌尿器科学会雑誌
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Acute focal bacterial nephritis (Acute lobar nephronia) の2例
江原 英俊竹内 敏視小林 克寿林 秀治長谷 行洋兼松 稔栗山 学坂 義人河田 幸道藤広 茂田村 公一渡辺 克
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1989 年 80 巻 1 号 p. 95-99

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抄録

Acute focal bacterial nephritis (以下AFBNと略す) は, 1ないし数個の腎葉に限局した腎の炎症性疾患であり, 早期の適切な抗生剤による保存的治療が奏効する疾患である. 今回AFBNの2症例を経験したので報告する. 症例1は52歳の男性で, 前立腺肥大症による尿閉のため, カテーテルを留置中, 突然の発熱と右側腹部痛を訴えた. 超音波検査, CTにより右腎に多発性で周囲の腎実質に比べて低い density の辺縁不明瞭な腫瘤を認めた. 吸引細胞診で好中球, 組織球を主体とする炎症性変化がみとめられた. 一方, 両側肺野に多発性腫瘤を認め経気管支的生検により肺膿瘍と診断された.以上より, 多発性肺膿瘍を併発したAFBNと診断し, 抗菌剤投与を行い入院後5週間で軽快退院し, 発症後1年8ヵ月の現在, 再発の徴候は認められていない. 症例2は24歳の女性で, 突然の発熱と嘔吐で発症し, 右側腹部に圧痛を認めた. 超音波検査, CTにて右腎に症例1と同様の腫瘤を多数認めた. 約2週間の抗菌剤投与を行い軽快した. その後, 両側膀胱尿管逆流現象を認めたため, 逆流防止術を行い, 発症後1年3ヵ月の現在再発を認めていない. AFBNは, 画像診断技術の発達と共に確立された疾患単位であり, 閉塞性尿路疾患や膀胱尿管逆流現象等の基磁疾患を有する症例において, 腎の急性炎症発生時には本症を考慮することにより, 今後多数報告されるものと思われた.

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