日本泌尿器科学会雑誌
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前立腺手術後における尿失禁の検討
石井 徳味高村 知論江左 篤宣朴 英哲光林 茂金子 茂男栗田 孝
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1989 年 80 巻 10 号 p. 1474-1480

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抄録

当院開設以来当科において施行した前立腺手術のうち, 術後経過観察可能であった470症例を対象とし, 術後発生した尿失禁について検討を加えた. またこれらの症例に対して術前に施行した排尿動態機能検査の有用性についても検討した.
1) 経尿道的前立腺切除術 (以下TUR-P), 恥骨後式前立腺摘除術 (以下RPP) 及び前立腺凍結術後の全体における術後尿失禁発生率は5.7%であった.
2) 術式別の術後尿失禁発生頻度では, TUR-Pで325例中23例 (7.1%), RPPで115例中4例 (3.5%) であった. 前立腺凍結術では, 術後尿失禁は1例も認めなかった.
3) TUR-P及びRPPでは, 切除, 摘除前立腺重量と術後尿失禁発生頻度に相関は認められなかった.
4) いずれの術式においても術後発生した尿失禁様式に明らかな差異は認められなかった.
5) 尿失禁治癒例は術後1年以内に集中しており, 尿失禁症例27例中18例 (66.7%) であった尿失禁発生後1年以上を経過した症例に尿失禁治癒例は認められなかった.
6) 術後尿失禁発生症例に対して術前に施行した膀胱内圧測定検査上, 異常所見を認めた症例では尿失禁が治癒する割合が低かったが, このような症例では術前に神経系障害をきたす可能性のある基礎疾患を合併している頻度が高かった.
7) 尿失禁に対する治療として薬物療法, FES (Functional Electrical Stimulation, 以下FES) 療法を施行したが, 薬物療法無効11例中4例 (36.4%) に対してもFES療法が奏効し, また尿失禁が治癒しなからた一部の症例でも一時的な尿失禁の改善及び消失を認めたことにより, FES療法の有効性が示唆された. 薬物療法では主として多剤併用投与をしているため, 個々の薬剤に対する効果判定は困難であった.

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