日本泌尿器科学会雑誌
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ヒト尿管の材料力学的性質
中河 裕治
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1989 年 80 巻 10 号 p. 1481-1488

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抄録

本研究は微小発破の生体応用に関する研究の第10報に相当する.
微小発破による尿路結石破砕術を尿管結石に応用するための基礎実験として, 病理解剖遺体より得られた正常尿管を用いて, ヒト尿管の材料力学的性質を検討した.
引張り試験
1) 伸び―引張り荷重曲線は縦横の2方向において3相性の態度を示し, 第1降伏点で尿管の一部に損傷が生じ始め, 第2降伏点で尿管の全層に損傷が生じると考えられた.
2) 尿管の張力は, 第2降伏点において, 横方向が平均0.75kgf/cm, 縦方向が平均2.8kgf/cmであった. 伸び率は縦横の2方向でほぼ同程度であった. したがって, 尿管損傷はまず横方向から生じると考えられた.
3) 尿管の横方向の最大応力は平均7.5kgf/cm2であり, 膀胱の最大応力に比べて大きかった.
膨らませ試験
1) 尿管の内圧が平均1.9kgf/cm2, 内径が平均6.4mmになると, 尿管損傷は全層に達し, 漏出を生じた.
2) 漏出時の張力および外径増加率は, 引張り試験における横方向第2降伏点の張力および伸び率にほぼ一致した.
以上の結果より, 尿管は膀胱に比べ材料力学的には微小発破のより良い適応材料であると考えられた. しかし, 漏出時の尿管の内径は小さく, 発破の際に生じる生成ガスの影響で尿管が損傷される危険性が示唆され, 生成ガスの漏れをなくした新たな爆薬室の開発が必要であると考えられた.

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