日本泌尿器科学会雑誌
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嚢胞腎の進展要因の検討と経皮的嚢胞縮小術の効果
福崎 篤沼田 功折笠 精一
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1989 年 80 巻 10 号 p. 1489-1496

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抄録

常染色体優性成人型嚢胞腎における腎障害の進展要因を解析する目的で, 本症の27例 (男13例, 女14例, 初診時年齢10歳~74歳, 平均44歳) について2年から12年の経過観察をおこなった. 初診時の血清クレアチニン値は2例を除いていずれも正常範囲内にあった. 経過中6例に血清クレアチニン値の上昇を認め, うち4例が血液透析に移行した. 腎機能低下例では高血圧, 蛋白尿, 血尿, 膿尿を高率に認め, 高血圧や尿路感染が腎障害の進展に関与している可能性が示唆された. 嚢胞の性質と腎障害との関係について検討する目的で, 計100個以上の嚢胞を経皮的に穿刺し嚢胞液を採取し分析した. その結果, 腎機能良好例では嚢胞液の性状が血清に近い, いわゆる proximal cyst とされるものが多く, 腎機能低正例ではナトリウム濃度の低い, いわゆる distal cyst とされる嚢胞の割合が増加していた. 15例にDMSAレノシンチグラムをおこなった結果, 血清クレアチニンの上昇する前に画像上の変化とDMSA摂取率の低下を認め, DMSAレノシンチグラムは本症の経過観察に極めて有用と考えられた. 6例 (36嚢胞) に95%エタノールによる嚢胞の固定をおこない, 超音波及びDMSAレノシンチグラムで経過を観察した. その結果, 嚢胞の縮小とDMSA摂取率の増加する症例を認め, 本症の腎障害の進展には嚢胞のサイズの増大がある程度関与しており, 嚢胞縮小術の腎機能保持に対する有効性が示唆された.

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