日本泌尿器科学会雑誌
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Klinefelter 症候群における思春期の内分泌学的および睾丸組織学的変化の検討
篠原 充原 慎簑和田 滋阿曽 佳郎福谷 恵子
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1989 年 80 巻 4 号 p. 574-581

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抄録

外性器異常により発見された小児 Klinefelter 症候群の3例を経験した. 思春期前に本症候群が発見されることは稀であり, さらに睾丸生検を含めた内分泌学的検討の報告は少ない. 3例とも思春期の終了前に睾丸生検および内分泌検査を行った. 思春期前における身体的発育と間隔―下垂体―性腺系の反応は正常であった. また, 思春期以降に血中ゴナドトロピン値の異常上昇とLH-RHに対する過剰反応を認めるようになった. しかし, 睾丸組織像を詳細にみると, 精祖細胞の減少が認められ思春期前よりすでに睾丸の異常が存在することが示唆された. 以上の結果より, 本症候群の成人における睾丸機能障害の一部は思春期前より存在するものの, 多くは思春期以降に顕著になり臨床症状を現すと考えられた. つまり, 思春期前より存在する率丸の機能異常のため, 思春期において血中ゴナドトロピンの上昇が引き起こされ, さらにこの高ゴナドトロピン状態が率丸の障害を誘発あるいは増悪し, この過程が増幅され最終的に著しい高ゴナドトロピン血症と睾丸の荒廃をきたすものと考えられる. 完全な治療のためには, 早期に本症を診断する必要があり, そのためにも小児期に存在する停留睾丸や尿道下裂などの外性器異常に対しより深い注意をはらう必要があると考えられた.

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