1989 年 80 巻 4 号 p. 596-601
子宮頚癌治療後の経過観察中に腎癌を偶然に発見した1例を報告する. 症例は55歳女性, 無職. 母親が胃癌で死亡. 1984年に子宮頚部扁平上皮癌IIIbの為に放射線治療を受け, 以後定期的観察を受けていた. 1987年にたまたま腹部X線CT走査を受けたところ, 右腎部に腫瘤像を認め東京都立墨東病院泌尿器科に入院した. 諸検査により右腎癌の臨床診断後, 根治的腎摘術を行い, 組織学的には腎細胞癌pT2N0M0であった. 全経過を通じ顕微鏡的にも血尿を認めなかった.
本症例は子宮頚癌と腎癌の本邦報告例としては7例目に相当する. 子宮頚癌と腎癌との重複癌についてと, 画像診断法による無症状腎癌の早期発見について考察した.