1989 年 80 巻 5 号 p. 659-665
Natural killer (NK) 細胞の生体内での役割に関して, 多数の報告がみられるが, その活性を測定する手段としては, 一般に 51Cr-release 法が用いられている. しかし, この方法は radioisotope を併用するため, 繁雑な手続きと操作が必要となる. そこで今回, NK活性の測定において, radioisotope を使用せず, 実験室内で簡便に行える ATP-chemiluminescence 法 (ATP法) の有用性を検討するため, 健康人40名, 泌尿器科系良性疾患患者40名, 尿路悪性腫瘍患者39名の計119名の末梢血NK活性を測定した. 両者で測定したNK活性はよく相関し (相関係数0.78), ATP法はNK活必測定法として利用できると思われた. このATP法で測定した末梢血NK活性は, 健康人と良性疾患患者あわせて80名については加齢とともに低下する傾向がみられたが尿路上皮悪性腫瘍患者においては, 年齢による影響はなかった. また悪性腫瘍患者のNK活性は, high stage 症例ほど低くなる傾向にあった.
ATP法は, 51Cr-release 法よりも感度が高く, 少数の細胞でも評価しうるので, 検体採取が少量ですむ. しかも生細胞はほぼ一定量のATPを含んでいるが, 死細胞では急速に分解され消失することより, NK活性以外にも殺細胞能を検討するうえで利用できると考えられる.
また, 尿路悪性腫瘍患者の病態を把握するうえで, 末梢血NK活性は良い指標になることが示唆された.