日本泌尿器科学会雑誌
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Beige マウス (Chediak-Higashi 病モデル) におけるBBN膀胱発癌実験
小林 裕
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1989 年 80 巻 5 号 p. 650-658

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抄録

化学発癌におよぼす Natural Killer (NK) 活性の影響を調べるため, 遺伝学的にNK活性が低値である, beige mutant mouse を用いて, N-butyl-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) による膀胱化学発癌を行ない, NK活性が正常であるC57BL/6 mouse との膀胱粘膜の早期発癌過程を比較検討した. 同時に biological response modifier (BRMと略す) の1つであるOK-432を経口投与し, その影響も検討した.
すなわちC57BL/6 mouse および beige mouse をおのおの2群に分け, A, B群とC, D群とした, A群およびC群には initiator として0.1%BBN溶液を4週間経口投与した. B群およびD群はBBNの他にOK-432 (5KE/1,000ml) を同時に同期間飲料水として投与した.
そして投与後12週, 14週, 16週, 18週, 24週にて屠殺し膀胱を光学顕微鏡 (光顕) および走査電子顕微鏡 (走査電顕) にて観察した.
光顕的観察所見では18週において初めて悪性変化が認められその頻度はA群0/10, B群0/8, C群5/10, D群3/9であり, 24週ではA群1/8, B群1/9, C群2/5, D群3/6であった (18週では beige mouse とC57BL/6 mouse との間に, p<0.01にて有意差が認められた). また走査電子顕微鏡による観察では発癌過程に出現すると考えられる敷石状細胞およびその表面に出現する pleomorphic microvilli や short uniform microvilli などの出現頻度は16週においてA群2/10, B群1/11, C群5/6, D群4/5, 18週ではA群2/10, B群0/8, C群7/10, D群7/9, または24週ではA群0/8, B群0/9, C群4/6, D群3/6であった (16週, 18週, 24週で beige mouse とC57BL/6 mouse との間にp<0.01にて有意差を認めた).
しかしながら,BRMであるOK-432投与群と非投与群との間にはC57BL/6 mouse, beige mouse いずれにも光顕的にも走査電顕的にも有意差は認められなかった. 以上より beige mouse 群ではC57BL/6 mouse 群より膀胱発癌が早期に認められた, これはNK活性が膀胱発癌の免疫監視機構 (immune surveillance) に関与している可能性を強く示唆していた.

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