1990 年 81 巻 11 号 p. 1633-1641
加齢による勃起機能低下の原因を探るため, 407例の男性を対象として, 夜間睡眠時勃起現象(Nocturnal penile tumescence NPT) 測定および陰茎血管系検査を行い, 加齢との関係で検討をおこなった.
1) 全例に erectometer を用いてNPT測定を行った. NPT時の陰茎周増加値は高齢になるにしたがい徐々に低下し, 特に60歳以上で有意な低下が認められた. またNPT 10mm未満の異常値出現率は, 40歳代2.7%, 50歳代7.1%, 60歳代16.7%, 70歳代29.1%と高齢になるに従い増加が認められた. 加齢に伴い器質的勃起障害の頻度は増加するものと考えられた.
2)陰茎血管系の異常を調べるため penile blood pressure index (PBPI) 測定およびパパベリンテストを行った. PBPIは70歳以上で有意な低下を示した. またパパベリンテストで十分な勃起が得られる頻度は50歳代66.7%, 60歳代48.6%, 70歳以上15.8%と高齢になるに従い明らかな減少が認められた. NPT 10mm未満の症例では, 全例にパパベリンテストまたはPBPIで異常が認められ, 加齢により増加する勃起障害の原因として, 陰茎血管系障害が重要であると考えられた.
3)喫煙と陰茎血管系障害の関係を検討したところ, 非喫煙群に比べ喫煙群でパパベリコテストの反応性低下およびPBPI異常が多く認められ, 喫煙は加齢による勃起障害を助長する risk factor と推測をれた.