日本泌尿器科学会雑誌
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81 巻, 11 号
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  • 小柳 知彦, 野々村 克也
    1990 年81 巻11 号 p. 1609-1617
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 高 栄哲
    1990 年81 巻11 号 p. 1618-1625
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    生化学的, 分子生物学的および免疫組織化学的手法を用いてヒトライディック細胞内のアンドロジェコレセプター (AR) の存在について検討した. まず, Percoll gradient にて, ヒト精巣組織より高純度ライディック細胞を分離し, AR測定, Western ブロット法, Northern ブロット法を用い, 以下の結果を得た. 1) 3H-methyltrienolone を用いたAR測定にて, 全精巣組織と同様の高親和性ARをみとめ, またその Bmax は全精巣ARより低値であった. 2) 抗ヒトAR (hAR) モノクローナル抗体をもちいた Western ブロット法にて, 分子量の異なる2本のバンド (97kDa, 80kDa) をみとめた. これらはそれぞれhAR cDNAの1番目と2番目の initiation site から翻訳定れた特異的ARタンパク質と考えられた. 3) hAR cDNA プローブを用いた RNA Northern ブロット法にて前立腺組織および全精巣組織と同様AR mRNA (分子量約9.5kb) の存在を証明し得た. 最後に, ヒト精巣組織における抗hARモノクローナル抗体をもちいた免疫組織化学反応ではライディック細胞の核に陽性像をみとめた. これはARも他のステロイドレセプターと同様, 核内にレセプターをもつことを示唆した. 以上より, ヒトライディック細胞核内にARの存在を証明した. このアンドロジェン産生細胞自身に存在するARは, 精巣内でのホルモン環境を維持するためになんらかの自己制御機構の可能性を示唆している.
  • 岩澤 晶彦, 熊本 悦明, 福島 道夫, 藤永 〓
    1990 年81 巻11 号 p. 1626-1632
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路性器腫瘍における Human papillomavirus (HPV) DNAの検索を Southern blot hybridization 法を用いて行なった.
    男性の尖圭コンジローマ20例におけるHPV DNAの陽性率は, HPV 6型で85% (17/20), 11型で95% (19/20), 16型で5% (1/20), 18型では0% (0/20)であった. 女性の尖圭コンジローマ2例に関しては, HPV 6型で100% (2/2), 11型で100% (2/2), 16型で50% (1/2), 18型では0% (0/2)であった. なお, HPV 6型が陽性である症例は, 全例HPV 11あ型も陽性であった. また, HPV 6型と11型とともに, 陰茎癌や子宮頚癌に検出定れる16型も陽性でったものが2例認められた.
    陰茎癌は, 6例中2例にHPV 16型が検出定れたものの, HPV 6型と11型および18型は全例陰性であった. HPV 16型が陽性の1症例は, 過去に3回陰茎尖圭ココジローマを繰り返した後に陰茎癌が出現したため, 尖圭コンジローマの悪性化が推測され, 癌化の過程においてHPV 16型の関与が示唆定れた.
    女子外陰癌の1例では, HPV 6型と11型と16型および18型は検出定れなかった.
    外性器以外の尿路性器腫瘍の発生についてもHPVの関与を推測したが, 検討した前立腺肥大症3例と前立腺癌5例および膀胱癌24例において, HPV 6型と11型と16型および18型は検出定れなかった. なお, 膀胱癌の8例についてHPV 33型も検索したが, 全例陰性であった.
  • 夜間睡眠時勃起現象, penile blood pressure index および塩酸パパベリンテストによる検討
    青木 正治, 熊本 悦明
    1990 年81 巻11 号 p. 1633-1641
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    加齢による勃起機能低下の原因を探るため, 407例の男性を対象として, 夜間睡眠時勃起現象(Nocturnal penile tumescence NPT) 測定および陰茎血管系検査を行い, 加齢との関係で検討をおこなった.
    1) 全例に erectometer を用いてNPT測定を行った. NPT時の陰茎周増加値は高齢になるにしたがい徐々に低下し, 特に60歳以上で有意な低下が認められた. またNPT 10mm未満の異常値出現率は, 40歳代2.7%, 50歳代7.1%, 60歳代16.7%, 70歳代29.1%と高齢になるに従い増加が認められた. 加齢に伴い器質的勃起障害の頻度は増加するものと考えられた.
    2)陰茎血管系の異常を調べるため penile blood pressure index (PBPI) 測定およびパパベリンテストを行った. PBPIは70歳以上で有意な低下を示した. またパパベリンテストで十分な勃起が得られる頻度は50歳代66.7%, 60歳代48.6%, 70歳以上15.8%と高齢になるに従い明らかな減少が認められた. NPT 10mm未満の症例では, 全例にパパベリンテストまたはPBPIで異常が認められ, 加齢により増加する勃起障害の原因として, 陰茎血管系障害が重要であると考えられた.
    3)喫煙と陰茎血管系障害の関係を検討したところ, 非喫煙群に比べ喫煙群でパパベリコテストの反応性低下およびPBPI異常が多く認められ, 喫煙は加齢による勃起障害を助長する risk factor と推測をれた.
  • 今村 厚志
    1990 年81 巻11 号 p. 1642-1648
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1982年5月から1989年4月までに長崎大学医学部泌尿器科で行った腎移植症例のうち, 6ヵ月以上安定した腎機能を有する生体腎移植症例24例について腎移植後の骨塩量 (BMC) を経時的に測定した.
    男性17例, 女性7例で, 免疫抑制剤別によって2群 (CYA群:12例, AZP群:12例) に分け比較検討した. 移植時の年齢はCYA群29.6±8.1歳, AZP群27.2±13.8歳で, 移植までの透析期間はCYA群33.6±26.5ヵ月, AZP群27.2±14.0ヵ月であった. 骨塩測量は norland 製 bone mineral analyzer の single photon absorptiometry 法により測定した.
    AZP群のBMCは24ヵ月では増加症例はなく36ヵ月では1例のみ増加し, 残りの症例は不変ないし減少で改善傾向の遅延がみられた. CYA群のBMCは12ヵ月では11例中5例(45%), 24ヵ月では10例中7例 (70%) の増加をみ, 早期より改善傾向がみられた. 2群間でのBMCの相違の原因としてステロイド総投与量に有意の差 (p<0.001) がみられ, ステロイドの関与が強く示唆された.
  • CEA, Ferritin, β2-MG, Keratin, および Glycogen での検討
    小野寺 恭忠
    1990 年81 巻11 号 p. 1649-1653
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱移行上皮癌59症例について異型度, 深達度別に腫瘍細胞組織内の各種腫瘍マーカー (CEA, Ferritin, β2-MG), および Keratin, Glycogen について, パラフィン包埋薄切を用いて Peroxidase-Antiperoxidase (PAP) 法により免疫組織化学的に検討した.
    膀胱腫瘍組織内の陽性率, 分布および局在はCEAでは Grade, Stage が進むにつれて陽率性は高率となり, Ferritinとβ2-MGでは一定の傾向を示定ず, Keratin と Glycogen では陽性率は100%であり, Grade, Stage が進むにつれて, 腫瘍組織内の分布は mosaic 状となった.
    CEA, Keratin, Glycogen は, 組織学的 Grade, Stage の指標として有用と思われる.
  • 膀胱内注入療法の臨床効果での比較検討
    小野寺 恭忠
    1990 年81 巻11 号 p. 1654-1658
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱癌18症例のADM膀胱内注入療法前後での腫瘍細胞組織内の各種腫瘍マーカー (CEA, Ferritin, β2-MG), および Keratin, GlycVgen について, パラフィン包埋薄切を用いて Peroxidase-Antiperoxidase (PAP) 法により免疫組織学的変化と治療効果の関係について検討した. ADM膀胱内注入療法の臨床効果は, 有効率44.4%で, 注入療法前後の腫瘍組織内の変化は, CEAでは注入前後ともに陰性例に有効例が多く, Ferritin, β2-MGでは臨床効果による差は認めない. Keratin では, 注入前後で変化を認めないもののうち全層に弱陽性に染色定れたものに, 特に有効例を多くみた. Glycogen では, 注入後に減少したうち, 全層部で減少した例に有効例が多い傾向をみた. CEA, Keratin, Glycogen は膀胱内注入療法の効果判定の指標として有用と思われる.
  • 横田 崇
    1990 年81 巻11 号 p. 1659-1666
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    下部尿路機能の研究に動物を使用する時, これまでは麻酔剤や除脳法を用いてきた. 今回, 実験動物を簡単に非動化する方法として動物催眠に着目し, 家兎を対象にUDSの見地から, この方法の実用性につき検討を加えた.
    3kg前後の雄家兎20羽を使用した. 家兎はV字型手術台の上で仰臥位伸展位とすることで催眠状態へ入る. 催眠下で膀胱瘻作製後, 膀胱内圧, 外尿道括約筋活動電位を同時記録し更に尿道内圧も測定した. Pentobarbital 麻酔下でも同様の測定を行い比較検討した.
    催眠状態は約30分間から60分間持続した. その間, 尿道へのカテーテル挿入, 恥骨上膀胱穿刺等では覚醒しない. 催眠下での所見は膀胱が伸展定れるにつれて外尿道括約筋活動電位も徐々に増大し, 膀胱収縮と同時に外尿道括約筋の活動が停止する pattern が記録できた. この排尿反射に一致し, 注入された生食水が外尿道口より放出された. 催眠下での最大膀胱容量41.4±22.3ml, 最大膀胱収縮圧23.5±8.0mmHg, 静止時外尿道括約筋活動電位110±49μVであった. これらの測定中家兎は非動化のままであった. 麻酔下においては外尿道括約筋活動電位11.0±8.1μVで, 注入された生食水は受動的に外尿道口より漏れ出てしまい, 排尿反射は起こらなかった. 最大尿道閉鎖圧は催眠下で87.6±8.2mmHg, 麻酔下で58.3±2.36mmHgであった. 麻酔下において下部尿路機能は著しく抑制定れた.
    動物催眠法は比較的生理的状態を保持したままで動物を非動化でき, 下部尿路機能をを評価する動物実験において有用な方法と思われる.
  • 阿部 良悦, 餌取 和美, 加藤 哲郎, 佐藤 一成
    1990 年81 巻11 号 p. 1667-1674
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎または尿管結石症38例を対象に, 39件の軟性腎盂尿管鏡による経尿道的結石破砕術を行った. その結果39件中37件 (94.9%) で結石に到達でき, 35件 (89.7%) で自然排石が可能なまでに充分に結石を破砕することができた. 非成功例は, 尿管狭窄が高度のため尿管鏡が結石まで到達し得なかったもの, 尿管穿孔のため観血手術に切り替えたもの, 良好な視野を得ながら破砕できなかったものの4例であった. 完全排石は180日以内 (平均27.9日) に破砕例35例中33例にみられた. 合併症は, 尿管穿孔が3例, 尿管ステント抜去困難, 術後の腎周囲膿瘍および尿管外尿溢流がそれぞれ1例であった.
    以上の成績は, 軟性腎盂尿管鏡を使用した経尿道的結石破砕術が, 腎結石を含めた上部尿路結石の治療に広く利用でき, ESWLとともに結石治療の選択の幅をより広げるものと思われた.
  • 藤本 健吉, 公平 昭男
    1990 年81 巻11 号 p. 1675-1679
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    γ-セミノプロテインは前立腺特異抗原であり, 前立腺癌の血清学的診断あるいは経過観察の指標として有用であることは多くの報告がある. 我々は急性前立腺炎でγ-セミノプロテインが高値を示した症例を経験したので, 急性前立腺炎におけるγ-セミノプロテインに着目し, 測定・検討した. 同時にPAP・白血球数・CRP・発熱等も測定し, 比較したところ以下のごとくであった. 1: 急性前立腺炎において炎症の急性期にγ-セミノプロテインは陽性率62.5%で異常高値を示す. 2: 治療による炎症の消退とともにγ-セミノプロテインは速やかに正常域に復す. この変動は発熱・白血球数・尿所見とほぼ一致しており, CRPの陰性化・前立腺圧痛の消失よりは速い. 3: 急性前立腺炎ではPAPの上昇は認めない. 以上より結論として, 1: 急性前立腺炎は臨床的に診断がつきやすい疾患ではあるが, γ-Smは急性前立腺炎に対するより特異的なマーカーとして炎症の状態・変化を評価する指標とみなすことが可能である. 2: γ-Smは急性前立腺炎の際にも高率に陽性化するため前立腺癌の診断上注意を要する.
  • 秋山 隆弘, 池上 雅久, 今西 正昭, 石井 徳味, 西岡 伯, 植村 匡志, 国方 聖司, 光林 茂, 神田 英憲, 松浦 健, 栗田 ...
    1990 年81 巻11 号 p. 1680-1685
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎移植患者の尿で, FDP分画である D-dimer (ELISA, 154検体), E (ラテックス凝集反応, 54検体) の両分画を測定した. D-dimer は急性拒絶反応で70.0% (14/20), 慢性拒絶反応進行期で33.3% (6/18) の陽性率を示し, E分画はそれぞれで88.9% (8/9), 80.0% (4/5) の陽性率を示した. 尿FDP-E分画は従来のFDP全分画をはるかに上まわる拒絶反応の有用な指標と考えられ, これはE分画が腎機能障害の指標として優れていることによるであろう.
    一方, 拒絶反応による腎糸球体内血液凝固につづく局所二次線溶の反映とみな定れる D-dimer の尿中出現は, D-dimer/FDP比という指標で観察することにより, 諸病態で興味ある推移を示した. 安測期ではこの比は高く, 急性拒絶反応では発症期には低下し回復過程で高値の傾向を示したが, 非可逆的のものでは上昇しないままであった. 慢性拒絶反応でも低値に推移した. D-dimer/FDP比は拒絶反応の可逆性, 予後推測の指標として有用と考えられた. このことから二次線溶能の亢進を目的とするt-PAによる血栓溶解療法の, 拒絶反応治療への有用性が示唆された.
  • 大橋 洋三
    1990 年81 巻11 号 p. 1686-1693
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男子不妊症における androgen 不応症の存在を検討する目的で, 特発性男子不妊症61例 (乏精子症56例, 無精子症5例) を対象として精細管内アンドロゲンレセプター (AR) を methyltrienolone (R1881) を ligand として測定し, 各種パラメーターとの関連性をみた.
    まず微量サンプルでの測定方法を確立する目的で, 前立腺癌患者より除精巣術で得られた分離精細管を用いて基礎的検討を行った.
    細胞分画法を行わずに total intratubular salt-soluble extract を調整し, さらに micro-receptor assay を行い, これが臨床応用可能であることを証明した.
    外陰部皮膚ARを同時に測定した34例については, 精細管内ARとの関連性を認めず, 外陰部皮膚ARは男子不妊症におけるandrogen不応症の指標となり得ないことが判明した.
    精細管内ARの cut-off 値であるが, JSC8.5以上の精管結紮後の症例, 精管異常および前立腺癌症例の計22例について検索した Bmax は30.38±9.89fmol/mg Protein (mean±S.D.) であり, androgen 不応症の cut-off 値を mean-2S.D. の11fmol/mgpとした.
    特発性男子不妊症61例中AR低値群は7例存在し, LH, testosterone (T) xLHはAR正常群に比し有意に高値を示したが, JSC, TおよびFSHは両群間に有意差がなく, 精細管内T, DHTとの関連も認められなかった. このことより, AR低値例では中枢におけるARの何らかの異常が示唆定れるとともに, AR低値例, 即ち androgen 不応症は稀であると考えられた.
  • 大島 伸一, 松浦 治, 竹内 宣久, 田中 国晃, 橋本 純一, 杉山 敏, 藤田 民夫, 松井 基治, 小野 佳成, 佐藤 正文, 山田 ...
    1990 年81 巻11 号 p. 1694-1699
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1978年1月より1989年10月までに社会保険中京病院, 名古屋記念病院, 小牧市民病院, 市立岡崎病院にて施行した1次死体腎移植144例の成績を報告した. 患者の年齢は14~54歳, 平均35歳であり, 男性は100例, 女性は44例であった. 慢性腎不全に至った原疾患は, 糸球体腎炎132例, 腎孟腎炎3例, その他9例であった. 腎提供者は119例144腎であり, 年齢は4~68歳, 平均41歳, 男性66例, 女性53例であった. 免疫抑制法は1978年1月より1982年11月までの15例をステロイド, アザチオプリン, ALGの3剤で (I群) 1982年11月より1986年12月までの49例のステロイド, シクロスポリンの2剤で (II群), 1987年1月より1987年12月までの23例をステロイド, シクロスポリン (4mg/kg), ALG (500mg) の3剤で (IIIa群), 1988年1月よりの57例をステロイド, シクロスポリン (6mg/kg), ALG (1,000mg) で (IIIb群) 行った. 各群別の1年, 2年, 5年の移植腎生着率は1群で40%, 33%, 19%, II群で78%, 74%, 64%, IIIa群で64%, 55%, IIIb群で89%であった. 1年, 2年, 5年患者生存率は, I群で86%, 84%, 79%, II群で98%, 96%, 96%, IIIa群で92%, 92%, IIIb群で100%であった. シクロスポリンの登場により著しい死体腎移植成績の向上が認められた.
  • 福井 準之助, 保坂 恭子, 石塚 修, 岡田 昇, 井川 靖彦, 小川 秋實
    1990 年81 巻11 号 p. 1700-1705
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    女性尿失禁患者のうち, 骨盤底筋脆弱による54例, 排尿筋の不随意収縮による38例, および両者の合併した23例に対する保存的療法の遠隔成績を検討した. 尿失禁の消失を著効, 失禁量と回数の減少で患者が満足しているものを有効とした. 骨盤底筋脆弱による尿失禁に対する薬物単独療法 (α刺激薬, 三環系抗うつ薬, 排尿筋弛緩薬等) の著効率は13%, 有効率は23%, 骨盤底筋訓練 (Kegel 法) 単独またはこれに薬物療法併用の著効率は36%, 有効率は86%であった. 排尿筋不随意収縮による尿失禁に対する膀胱訓練と薬物療法 (排尿筋弛緩薬と三環系抗うつ薬) の併用治療の著効率は14%, 有効率は61%であった. 混合型の尿失禁に対する膀胱訓練と薬物療法の併用を主とした治療の著効率は17%, 有効率は43%であった. 尿失禁は, 薬物投与を中止して2年以上経過すると尿失禁の再発例が増加した. 以上の結果から, 尿道脆弱による尿失禁に対しては骨盤底筋訓練が先ず試みるべき方法といえる. 一方, 排尿筋不随意収縮による尿失禁に対しては, 膀胱訓練と薬物療法の併用によりある程度の効果が得られ, しかもこれ以外に有効な治療法がないので, 選択すべき治療法である.
  • 森山 信男, 長瀬 泰, 植木 哲雄, 保坂 義雄, 東原 英二, 村橋 勲, 阿曽 佳郎
    1990 年81 巻11 号 p. 1706-1710
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    19例の陰茎癌症例ならびに12例の尖圭コンジローム症例のパラフィンブロックを用いて, human papillomavirus (HPV) の組織化学的局在を In situ hybridization 法 (キット) で検討した. 陰茎癌での陽性例は1例のみ (5.3%)で, type は16/18型であった. 陽性腫瘍細胞は, Koilocytosis を示定ず, 限局した部位でかつ散見的に認められた. 一方, 尖圭コンジロームでは11例 (91.7%) が6/11型で陽性であった. その局在は主に koilocyte の核であった. しかしこのうち5例が他の type との交叉反応を示した. 以上より, 今回我々の検討した日本人陰茎癌ではHPV6/11型, 16/18型, 31/33/35型の関与は少ないと思われた. しかし, 1細胞当たりの HPV-DNA のコピー数が少ない可能性や, まだクローニング定れていない他の papillomavirus の関与については今後の検討が必要であろう.
  • 竹内 敏視
    1990 年81 巻11 号 p. 1711-1719
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラット N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) 膀胱発癌モデルおよびヒト膀胱前癌性病変および腫瘍について銀コロイド染色法による核小体形成体数を測定し, 膀胱発癌過程における核小体形成体関連タンパク (AgNOR) の変化とヒト膀胱前癌性病変および腫瘍における診断的および臨床的意義を検討した. ラットBBN発癌モデルの各増殖性病変の細胞核AgNOR数はそれぞれ無処置群の正常移行上皮: 1.26±0.09, BBN処置群の周辺非病変移行上皮: 1.75±0.10, 単純過形成: 2.01±0.15, 乳頭状・結節性過形成: 2.15±0.19, 乳頭腫: 2.37±0.12, 移行上皮癌: 3.52±0.23であった. またヒト膀胱における各病変では正常移行上皮: 1.71±0.08, 増殖性膀胱炎: 1.79±0.18, 過形成:1.76±0.23, 異形成では軽度: 2.15±0.36, 中等度: 2.61±0.27, 高度: 3.46±0.57, 移行上皮癌では G0:1.95±0.17, G1: 2.39±0.20, G2: 3.33±0.31, G3: 4.68±0.51, 上皮内癌: 3.61±0.52であり, 各病変のAgNOR数はラットおよびヒト膀胱移行上皮の細胞増殖能をよく反映し, 腫瘍の異型度との相関が認められた. また膀胱癌に対する化学療法の有効例では治療により有意にAgNOR数の減少と分布の変化を認めたが, 不変例ではむしろ増加する傾向が認められた. 以上, AgNORは膀胱におるけ前癌性病変および腫瘍の客観的診断や治療効果の評価に有用で, 広く臨床応用が可能と考えられた.
  • 利尿剤負荷レノグラーィーによる検討
    武田 正之, 片山 靖士, 高橋 等, 川上 芳明, 薄 宏, 筒井 寿基, 斉藤 和英, 佐藤 昭太郎, 小田野 幾雄
    1990 年81 巻11 号 p. 1720-1724
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    シリコン製尿管ステントを留置した21名24腎尿管について, 利尿剤負荷レノグラフィー (Diuresis radionuclide urography, DRU) を用いて in situ の尿流動態を調べ, 以下の結論を得た.
    1. 尿管の手術において, シリコン製ステントは尿流保持に有効であった.
    2. 骨盤内悪性腫瘍による外因性尿管狭窄に対しては, ステント留置後もDRUパターンは不良であった.
    3. 成人で外径5~8Fのステントを使用した場合, 尿管径に対して太すぎるステントはかえって尿流を阻害する可能性があると考えられた.
    4. ステント留置時のDRUパターンと Gates 法により算出したGFRにより, 水腎症の予後がある程度予測可能であった.
  • 近田 龍一郎, 折笠 精一, 坂井 清英, 久慈 了, 太田 章三
    1990 年81 巻11 号 p. 1725-1731
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    小児単腎18例 (先天性単腎14例, 片腎摘出4例) の腎機能を, DMSA腎摂取率及び尿α1-MG・β2-MG・NAG・微量 albumin を用いて検討した. 尚, 先天性単腎の6例と片腎摘出の1例に膀胱尿管逆流症 (VUR) を, 先天性単腎の2例に水腎症を伴っていた.
    18例中8例は正常コントロールのDMSA総腎摂取率 (51.8±3.7%:mean±SD)とほぼ同様の摂取率を示した. 10例はじ-2SD以下で, このうち合併尿路疾患の無い2例を含む5例はコントロール平均の70%以下の低摂取率であった. 尚, 血清Crやα1-MG・β2-MGでは, 1例を除き全例正常であった.
    尿α1-MG・β2-MG・NAGは, それぞれがほぼ同様な動きを示した. この中では尿α1-MGが最も敏感に尿細管障害を反映しており, 半数が高値をとり, DMSA腎摂取率低値のものにこの傾向が顕著であった.
    尿 albumin は, 尿α1-MGと明らかに異なった動きを示し, DMSA腎摂取率とも平行せず, 10歳以上の年長児に高値をとる例が認められた.
    今回の腎機能検査をすべて行いえた12例中9例75%は, 尿α1-MGと albumin の双方またはいずれかで異常値を示した. この9例中尿路に合併する疾患の無い2例を含む7例はDMSA腎摂取率で低値を示した.
    以上の結果から, 単腎例では尿路疾患を伴う例のみならず合併尿路疾患のないものでも, 小児期よりすでに腎に何らかの負荷がかかっている可能性が示唆された.
  • 高橋 俊博
    1990 年81 巻11 号 p. 1732-1738
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    脳膀胱症例においても排尿筋外括約筋協調不全 (detrusor-sphincter dyssynergia, DSD) をみることがある. DSDを示す脳膀胱症例における脳幹機能を検討するため, 左右の橋背外側部を関心領域とした dynamic CT (DCT) および聴性脳幹反応 (auditory brainstem response, ABR) を施行した. 脳膀胱13症例およびコントロール5症例に対し, DCTを実施した. CT値一時間曲線の異常パターンとしては, peak value に異常な低値を示すもの・filling time の延長を示すもの・rapid washout ratio の異常な低値を示すものがみられた. 13例の脳膀胱症例のうち6例にDSDをを認め, そのうち4例ではいずれかのパターンの異常を両側性に示したが, DSDを合併しなかった7例では両側性に異常を示した例はなく2例で片側 (左側) の異常を認めた. 脳膀胱8症例に対しABRを施行した. DSDを示した4例のうち2例では潜時.測が不可能であったが, 潜時測定が可能であった2例のI~V波間潜時 (I~V interpeak latency, I~V IPL) は, DSDのない4例のI~V IPLより延長していると考えられた. なおDCTで曲線パターンの異常を示定なかった2例のDSD例も同時に施行したABRでは波型異常のため潜時の測定が不可能であった. これらの結果から, DSDを伴う脳膀胱の場合脳幹部とくに橋背側部に機能異常が存在すると考えられた.
  • 吉田 利彦, 小川 隆敏, 藤永 卓治, 楠山 洋司
    1990 年81 巻11 号 p. 1739-1742
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    本邦第1例目の腎盂癌肉腫と考えられた症例を経験したので記載する.
    症例は55歳の女性で, 腰痛を主訴として来院した. 右側腹部に小児頭大の腫瘤が触知され, 後頭部,左前胸部および仙骨部の皮下に圧痛をともなう腫瘤が認められた. 胸部X線で多数の肺転移像が認められ, DIPでは右腎は描出されなかった. CTおよび腎血管撮影所見より, 右腎腫瘍と診断された. 腎血管撮影の際, 同時に無水エタノールを用いて右腎動脈塞栓術を施行した. 前医で施行された仙骨部腫瘤の生検組織を検討した結果, 癌肉腫の疑いがもたれた. VCR, ADMおよびCPAの3剤併用化学療法を1クールおこなったところ, 肺転移巣の縮小傾向はみられたが, その他の転移巣では全く効果は認められなかった. 全身状態悪化のため化学療法の続行を断念し, 以後姑息的治療に専念したが, 入院後5ヵ月で癌死した. 病理解剖所見では, 移行上皮癌と軟骨肉腫の両成分よりなる癌肉腫であり, 腎盂原発と考えられた. 他臓器への転移は, 肺, 肝, 骨および皮膚に認められた.
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