1990 年 81 巻 7 号 p. 1039-1044
排尿習慣の確立しはじめる3歳以上の小児 primary VUR 例153例を対象に, 尿失禁 (夜尿, 切迫尿失禁) の有無, 尿失禁及び尿路感染の既往の有無と逆流腎機能障害との関係について検討した.
尿路感染を主訴としたものが98例 (64%) と最も多く, 尿失禁を主訴としたものが43例 (28%) であった. 尿路感染を主訴としたもののうち44例 (45%) に尿失禁が認められ, VUR患者全体では87例 (57%) に尿失禁が見られた.
尿失禁と逆流腎の機能障害との関係をみると, 尿失禁のみで尿路感染の既往のない例では1例を除き全例腎機能は良好に保たれており, 腎機能障害を伴うものは尿路感染の既往のある例であった.
以上の結果より, 3歳以上のVUR例では,尿失禁は尿路感染の再発や尿路感染による腎障害の増悪因子となりうるが, VURに伴う腎障害と尿失禁との間には直接の関連は見られなかった.