日本泌尿器科学会雑誌
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二分脊椎及び仙骨形成不全による神経因性膀胱の成人発症症例
金親 史尚峰 正英石坂 和博後藤 修一横川 正之平賀 聖悟
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1990 年 81 巻 7 号 p. 1091-1094

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抄録

症例は48歳の男性. 排尿困難を主訴に, 近医を受診したが, 尿道よりカテーテルの挿入が出来ないため, 膀胱瘻を造設して尿路管理を行なっていた. 約1年半後に当科を紹介された. X線画像では, 二分脊椎・仙骨形成不全, 球部尿道に限局する狭窄, 水腎水尿管, 左側に中等度のVUR (右側は軽度) が認められ, 尿流測定では自排尿量5ml, 残尿量230mlと高度の排尿困難を示し, 膀胱内圧測定では高活動型膀胱と判定した. 排尿困難の直接的な原因には, 尿道狭窄が関与していると思われたが, 二分脊椎・仙骨形成不全による神経因性膀胱がその背景に存在すると思われた.
尿道狭窄の原因は不明であったが, まず内尿道切開術を施行したところ自尿可能となったため, 膀胱瘻を閉鎖した. 次に残尿量が多いため, TUR-Bnを行ない著明な残尿量の減少を認めた. その後も腎孟腎炎を繰り返したため, VUR防止術 (Cohen法) を両側尿管に対して行ない, 術後2年を経過しているが, 自排尿は可能で, 水腎症も改善し良好な経過をたどっている.
二分脊椎による神経因性膀胱の成人発症例は稀であり, 基本的な治療方針は間歇的自己導尿を中心とした保存的療法である. 本症例の場合は, 積極的な外科的治療を行なう方針をとり奏効した結果, 排尿状態と腎機能の改善が得られたものと思われた.

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