日本泌尿器科学会雑誌
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非同期性両側性腎細胞癌2例に対する核出術の経験
清水 弘文三木 誠松本 哲夫間宮 良美平田 亨栃本 真人伊藤 貴章塩沢 寛明辻野 進小柴 健一郎
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キーワード: 両側性腎細胞癌, 核出術
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1990 年 81 巻 7 号 p. 1087-1090

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抄録

非同期性両側性腎細胞癌の2例に対し, 核出術を施行し良好な結果を得たので, それらを報告すると同時に, 非同期性両側性腎細胞癌の治療法について考察を加えた.
症例1: 60歳女性, 右腎細胞癌のため腎摘除術を行ない10年後, CTなどで左腎細胞癌と診断した. 腫瘍核出術を施行し, 腎阻血時間は37分, 術2時間後より尿排泄を認め, Ccrは65ml/min., 20ヵ月後著変を認めない.
症例2: 62歳男性, 右腎細胞癌のため腎摘除術を施行, 11年後に左腎に再発した. 腫瘍核出術 (3コ) を行ない, 腎阻血時間は53分, 術後透析を10回行ない, その後利尿がつき, Ccr47.3ml/min. まで回復, 13ヵ月後の現在著変を認めない.
病理組織学的には前者は clear cell type, grade 1, 後老は alveolar clear cell type で一部 papillary あるいは cystic type の grade 2の腎細胞癌であった.
これら2例を含め非同期性両側性腎細胞癌は本邦で24例報告されている. これらのうち腎摘除術後透析例は5例, 核出術8例, 部分切除術2例その他9例で, 腎機能を温存する努力がなされている.
血液透析を避け, 充分な腎機能を残すと同時に, 原発巣を完全に取り除く可能性がある核出術や部分切除術は, このような例では第一選択の治療法といってよいと考える.

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