日本泌尿器科学会雑誌
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インポテンスの基礎と臨床
その現状と問題点
白井 将文
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1990 年 81 巻 7 号 p. 965-981

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抄録

ヒト陰茎深動脈より分岐したら行動脈が陰茎海綿体洞に開口する直前に平滑筋からなる弁構造があり, ここには自律神経が密に分布しており, これらが弁の開閉に深く関与していると考えられる. 一方, 陰茎海綿体洞より流出する静脈には弁構造はなく, 白膜直下を平行に走った後, 白膜を斜め, あるいは垂直に貫いて陰茎背静脈系に流入している. このような構築からら行動脈の弁が開くと血流が海綿体洞に流入し膨脹し流出静脈は白膜との間で圧迫され, また白膜自身が弁の作用をして血流の還流を妨害し勃起の維持に重要な働きをすると考えられる. また勃起の硬直には坐骨海綿体筋の収縮も関与していると考えられる. 一方, 海綿体小柱も勃起に深く関与していると考えられている.
次にインポテンスの診断では勃起機能検査が最も重要で, 特にパパベリンテストや dynamic cavernosometry, cavernosography による血管性インポテンスの鑑別診断が可能となった. 治療も塩酸パパベリンやプロスタグランディンE1のような血管作動薬を陰茎海綿体内に注入する治療法が普及してきた. これら治療法で効果のない症例で静脈性インポテンスには深陰茎背静脈結紮術や陰茎海綿体脚部結紮術などが試みられるようになった. また動脈性インポテンスに対しては血行再建術が行われる. これら方法で効果のない症例には各種 penile prosthesis の陰茎内挿入が有効である. また多少でも勃起する症例に対しては勃起補助具を使用させるとよい.

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