日本泌尿器科学会雑誌
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小児原発性VUR症例における逆流自然消失
島田 憲次田口 恵造小池 宏細川 尚三有馬 正明森 義則生駒 文彦
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1990 年 81 巻 7 号 p. 982-987

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抄録

過去約16年間に治療が加えられた小児原発性VUR症例の内で, 経過観察期間が3年以上におよぶ541例829尿管の臨床経過, とくに逆流自然消失に焦点を合わせ検討を加えた. 逆流自然消失は182例 (33.6%) 220尿管 (26.5%) に観察された. 性別では男子で40%, 女子で28%と有意の差が認められた. VUR-grade 例では拡張のない grade I~IIの尿管の85%, 軽度拡張尿管 grade IIIでは46%で自然消失がみられたが, 中~高度拡張尿管 grade IV~Vでは10%以下であった. 膀胱機能検査の結果, 37%に不安定膀胱の所見がみられた. 自然消失した症例の内で腎実質に scar が認められたのは7%で, VUR全症例での scar の頻度に比べ有意に低い値であった. 初診時に scar のない逆流腎での自然消失率は30%, scar のある場合は10%であった. 腎長比から計測した small kidney の頻度は4%で, VUR全症例での small kidney の頻度に比べ有意に低かった. 逆流腎が正常の大きさの場合の自然消失率は30%, small kidney では6%と有意の差がみられた. 逆流消失時の平均年齢は男子5.7歳, 女子7.7歳と男女差がみられた. 初診から逆流消失までの期間は平均1.9年で, 各 VUR-grade の間では有意差は認められなかった. 逆流消失尿管では各 VUR-grade とも最初の1年でほぼ50%が消失し, 3年間では90%が消失していた.

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