日本泌尿器科学会雑誌
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加速度負荷の犬腎におよぼす影響
高尾 雅也
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1991 年 82 巻 11 号 p. 1732-1741

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抄録

加速度負荷が腎におよぼす影響について, 特にレニン―アンジオテンシン―アルドステロン (R-A-A) 系および高加速度負荷に曝定れる航空機操縦者に対する経皮的腎尿管砕石術の安全性について, 犬モデルを用いて検討した. R-A-A系に対する加速度負荷の影響についての検討では, 通常のNa+摂取量下で飼育定れた平均体重10.9kgの雑種成犬22頭を座位として, 第1群は緩速変化, 第2群は急速変化の高加速度負荷を加えた. 血漿レニン活性は負荷により第1群では有意な変化を示定なかったが, 第2群では負荷後に有意に増加した. 血漿アルドステロン濃度は両群とも, 負荷により有意に増加した. アンジオテンシンIIは, 負荷により第2群で有意に減少した. これらの結果から, 加速度負荷による血漿アルドステロン濃度の増加はR-A-A系の活性化によるものではなく, 加速度負荷による循環血液動態の変化に起因しているものと推察された.
腎瘻造設腎の加速度負荷への耐性についての検討では, 15頭の雑種雌成犬を用い, ペントバルビタールによる麻酔下に1側腎に腎瘻を作成した. 腎瘻カテーテル抜去後2または4週間後に高加速度負荷を加えた. 負荷前後の腎機能検査に差はなく, 排泄性尿路造影で異常を認めた例もなかった. 負荷前の腎動脈造影ではほぼ全例腎瘻に沿って僅かな腎梗塞像を認めたが, 負荷後もこの状態は変化しなかった. つまり, 腎瘻造設腎は, 高加速度負荷にも十分耐え得るものと思われた.

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