日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
男性不妊症に対するα1-blocker 療法の基礎的, 臨床的検討
山下 良孝
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 82 巻 11 号 p. 1761-1770

詳細
抄録

基礎的検討として, 前立腺癌患者23症例, 前立腺肥大症患者24症例, 膀胱腫瘍6症例, 慢性精巣上体炎3症例, 精管異常による無精子症5症例, 避妊希望1症例より得られた, 男性副性器および精巣内各部のα1-receptor を測定した. Ligand として 3H-bunazosin, cold として phentolamime を用い, Scatchard plot analysis を用いて解析した. その結果, 男性副性器のα1-receptor 濃度は精管,前立腺において最も高く, 次いで精巣上体に高く, 精巣では最も低値であった. 精巣各部, 精細管においてはα1-receptor は低値であるが, 精巣網に比較的高濃度に分布していた.
臨床的検討として, 特発性男性不妊症22例 (無精子症4例, 乏精子症18例) に対して, bunazosin 3mgを連日, 12週から24週間内服定せ治療効果を判定した. 治療開始後12週, 24週の精子濃度改善度27%, 40%, 運動率改善度27%, 67%, 全般改善度36%, 60%の良好な結果を得た. 無精子症, 治療前FSH高値例には治療効果を認めなかった. 副作用は2例 (9.1%) に認められた.
以上より特発性男性不妊症に対する,α1-blocker 療法は, 有用な治療法であるが, 治療前すでに高度の造精能障害を示すものには効果が無いことが判明した. またその作用部位としては, 精細管におけるより, むしろ精巣上体以後の精路に作用することが示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top