日本泌尿器科学会雑誌
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腎盂尿管癌に併発する膀胱癌の臨床的意義
田代 和也古田 希岩室 紳也小針 俊彦浅野 晃司中内 憲二長谷川 倫男和田 鉄郎大石 幸彦町田 豊平
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1991 年 82 巻 11 号 p. 1771-1775

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抄録

1976年から1979年までの最近14年間に経験した腎盂尿管癌170例から, 併発膀胱癌の発生頻度, 予後への影響を retrospective に検討した. 腎盂尿管癌に対する膀胱癌は, 同時性に発生したものは31例 (18.2%), 術後にみたもの33例 (19.4%) の64例 (37.6%) であった. 原発腫瘍の部位別の併発頻度は, 腎盂が27.2%, 尿管が45.6%, 腎盂と尿管が58.3%であり, 腎盂と尿管の両者に腫瘍のみられたもので有意に高くみられた. 異型度別では, G1に続発性が多くみられた. 病期別ではT4で続発性膀胱癌が少ない傾向がみられたが, 膀胱癌の発生頻度には一定の傾向がなかった. 腎盂尿管癌の予後は, 10年生存率でG1が93.3%, G2が66.6%, G3が12.4%で異型度とよく相関した. しかし, 膀胱癌の併発が初発性であった症例, 続発性にみられた症例, 膀胱癌の併発のなかった症例の5年生存率は, おのおの56.2%, 72.7%, 64.8%と有意な差は認められなかった. 腎盂尿管癌に伴う膀胱癌は, 治療を複雑にするが, その予後に対する影響は認められなかった. 併発膀胱癌の治療は, 特別なものでなく一般の膀胱癌と同様に異型度, 病期に応じた治療をすることで十分と思われた.

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