日本泌尿器科学会雑誌
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前立腺異型過形成と潜伏癌の相関
松島 常
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キーワード: 前立腺, 異型過形成, 潜伏癌
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1991 年 82 巻 11 号 p. 1821-1828

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抄録

前立腺異型上皮のうちで, 主として細胞異型度に基づいて診断された異型過形成について, 全年齢層に及ぶ310例の剖検前立腺の段階全割標本を作成し, その発生部位, 発生様式, 年齢別頻度, 潜伏癌との合併率について検索し, 更に異型過形成を細胞異型度, 細胞配列の点から3 Grades に分類し, Grade と加齢, 潜伏癌との合併率との関係について検索し異型過形成の前癌病変としての可能性について検討した.
その結果, (1) 異型過形成は, 発生部位の点で潜伏癌と類似していた. (2) 異型過形成は, 潜伏癌と同様に50歳以上では加齢とともに発生頻度が上昇した. (3) 異型過形成発現世代は潜伏癌発現世代に先行していた. (4) 異型過形成の Grade は加齢とともに high grade 症例の比率が増加した. (5) 異型過形成と潜伏癌は, 統計的に有意に合併していた. (6) 異型過形成の Grade が高い症例で潜伏癌を合併する率が高く, とくに Grade 3症例の74%が潜伏癌を合併していた. (7) 異型過形成と潜伏癌はともに多中心性発生を示す症例があり, 両者は高率に合併する傾向を認めた.
以上の所見は, 異型過形成の前癌病変としての可能性を支持するものであり, 今後同一患者からの経時的生検により, その生物学的意義が一層明らかにされるものと考えられる. また, 生検にて異型過形成が発見された場合には, とくに high grade の異型過形成においては, すでに高率に癌を合併していると考え, 更なる検索と十分な経過観察が要求されるべきであろう.

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