1991 年 82 巻 11 号 p. 1817-1820
経尿道的前立腺切除術を受けた463例について, グラム陽性菌感染の臨床的意義を検討した. 菌種としては Enterococcus が半数, ついで S. epidermidis, S. aureus の順であった. グラム陽性菌感染が術後にグラム陰性菌感染に発展する危険率は非感染例とほぼ同率で, とくに高くはなかった. 術後に新たなグラム陰性菌感染の発生した症例は発熱を伴ったが, グラム陽性菌感染ではそのようなことはなかった. 尿路感染例は術後膿尿持続期間が延長する傾向がみられたが, グラム陽性菌感染例には長期間続く例はすくなく, 非感染例に近い経過をとった. これらの所見はグラム陽性菌の尿路感染がグラム陰性菌によるものより軽症であることをうらづけた.