日本泌尿器科学会雑誌
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精巣胚細胞腫瘍における Neuron Specific Enolase の免疫組織化学的検討
氏家 隆門間 信博
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1991 年 82 巻 2 号 p. 297-304

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抄録

精巣原発の胚細胞腫瘍44例において, 抗NSE抗体を用いて免疫組織化学的染色を行なった. また, 本症例中7例では腫瘍摘出前後に, 2例では摘出前に血清NSE濃度を測定した.
単一組織型 seminoma 20例では spermatocytic seminoma の1例を除く, typical および anaplastic seminoma の19例全例がNSE陽性であり, seminoma を含む複合組織型9例では全例で seminoma の部分に陽性であった. seminoma 以外では, 複合組織型で embryonal carcinoma を含む15例中13例で embryonal carcinoma の一部に, また, yolk sac tumor では21例中8例で一部の腫瘍細胞に陽性であった. mature あるいは immature teratoma では14例中10例で神経系の細胞, 軟骨細胞, 腺上皮などがNSEが陽性であった.
対照としての正常精巣5例ではいずれもNSEが精祖細胞に陽性であった.
本症例中術前に血清NSE濃度を測定した9例のうち, 単一組織型の seminoma 5例中4例と複合組織型で seminoma を含む2例のうち1例の, 計7例中5例で, NSEが術前に高値であったが, 腫瘍摘出後に低下した. 血清NSEの上昇を認めた症例は病期の進行した例, もしくは腫瘍の大きいものであった.
これらの結果から, 精巣胚細胞腫瘍において, 抗NSE抗体を用いた免疫組織学的検査は seminoma の病理組織診断上有用であり, さらに, 血清NSE値は seminoma の診断と臨床経過を観察するのに有用であると考えられた.

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