日本泌尿器科学会雑誌
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ラット片側精巣捻転における対側精巣障害の組織学的, 免疫組織化学的研究
五島 明彦
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1991 年 82 巻 5 号 p. 726-733

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抄録

Wistar 系ラットを用いて, 実験的片側精巣捻転における対側陰嚢内精巣についての組織学的, 免疫組織化学的検索を行なった. この結果以下の実験成績が得られた.
1) 片側精巣の捻転による対側精巣の造精機能障害は造精機能の成熟したラットのみに認められた.
2) 対側精巣の組織学的変化は, 片側精巣の捻転処置後3~5週で出現し, spermatocyte の著減, spermatid, spermatozoa の消失が認められ, また Sertoli-cell only の精細管も多数認められた. 間質細胞は増生していたが, 基底膜の肥厚や炎症性細胞の浸潤は認められなかった. 捻転群の精細管径および対側精巣重量のラット体重比は対照群に比してp<0.05で有意な減少が示された.
3) 蛍光抗体間接法による免疫組織化学的検索の結果, 対側精巣に造精機能障害を生じたラットの血清を用いた場合のみ, 正常精巣切片にて spemlatid, spermatozoa への immunodeposit が認められ, 抗精子抗体の存在によるものと考えられた.
以上より, 成熟 Wistar 系ラットでは, 片側精巣の捻転により対側精巣に生ずる造精機能障害の機序の1つとして, 抗精子抗体を主体とする体液性免疫の関与が示唆された.

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