日本泌尿器科学会雑誌
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腎細胞癌における肺転移の検討
肺血流シンチグラフィーによる肺塞栓病変と肺転移
舛森 直哉熊本 悦明塚本 泰司小谷 典之宮尾 則臣柳瀬 雅裕高橋 敦岩部 秀夫
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キーワード: 肺塞栓, 肺転移, 腎細胞癌
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1991 年 82 巻 5 号 p. 769-775

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抄録

腎細胞癌においては静脈浸潤の進展と肺転移の間には密接な関係があることが知られている. 我々は, 臨床的な肺転移が出現する際, 特に腎静脈や下大静脈への静脈浸潤がある場合には, その前段階として腫瘍塞栓が肺動脈に捕捉される必要があるのではないかと推論した. そこで, 種々の静脈浸潤を有する腎細胞癌22例において肺血流シンチグラフィーを施行し, 腎細胞癌における肺動脈腫瘍塞栓に関し検討を行った.
治療前肺血流シンチグラフィーの陽性所見は22例中8例に認められた. この陽性の頻度は, 静脈浸潤の程度と共に上昇し, また, 治療前陽性症例は陰性症例に比べて明らかに肺転移を合併する割合が高かった. これらのことは, 静脈浸潤の程度が強くなるにしたがい肺動脈における腫瘍塞栓を起こしやすくなり, さらに肺動脈の腫瘍塞栓は肺転移形成に発展する可能性が高いことを示唆していた.
治療前肺血流シンチグラフィー陽性症例の治療後の経過を検討すると, 陽性所見が新たな肺転移出現と並行するグループと, 経過観察中に陽性所見が消失し肺転移出現の認められないグループが存在した. 前者の結果からは, 治療前陽性例においては, より注意深い経過観察が必要であることが示された. また後者は, 肺転移成立のためには肺毛細血管への癌細胞の捕捉だけではなく, 癌細胞自身の転移能や癌細胞の増殖に適した微小環境などの要因が必要であることを示唆していた.

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