日本泌尿器科学会雑誌
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腎癌細胞株におけるインターフェロン及び酸処理による lymphokine-activated killer (LAK) 細胞に対する感受性の変化
腫瘍細胞上におけるクラスI主要組織適合抗原の発現との関係
冨田 善彦木村 元彦西山 勉佐藤 昭太郎
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1991 年 82 巻 5 号 p. 762-768

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抄録

腎癌細胞株 (ACHN, KRC/Y) を用いて, インターフェロン (IFN) 存在下での腫瘍細胞の培養が lymphokine-activated killer (LAK) 細胞に対する感受性に及ぼす影響につき検討した. また, このとき腫瘍細胞上の major histocompatibility complex (MHC) クラスI抗原の発現との関係についても検討した. フローサイトメトリー (FCM) による解析では, 未処理のACHN, KRC/YともクラスI抗原を発現しており, これはIFN-αまたは-γによる培養で増強され, pH3の酸処理によって減弱した. 腫瘍細胞をIFN-γまたは-αで処理すると明かにLAK細胞に対する感受性の低下が見られた. これまで腫瘍細胞上のクラスI抗原の増強にともなってLAK細胞に対する感受性が低下すると言う報告がいくつか見られたが, 今回の腎癌細胞株に対するIFNと酸処理による検討ではクラスI抗原の発現の増強とLAK細胞に対する感受性の低下は必ずしも並行しなかった. 以上の結果は臨床的に投与されたIFNによって腎癌細胞のLAK細胞に対する抵抗性が誘導され得る可能性と, RCC上で高率に発現されるクラスI抗原は必ずしもLAK療法に不利とはならない事を示唆している.

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