日本泌尿器科学会雑誌
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尿路結石患者における蓚酸カルシウム結晶形成に関する研究
重回帰分析法によるCaOX結晶形成におよぼす尿中諸物質の影響についての検討
片岡 喜代徳梅川 徹片山 孔一石川 泰章児玉 光正高村 知諭高田 昌彦加藤 良成郡 健二郎井口 正典栗田 孝
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1991 年 82 巻 5 号 p. 799-803

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抄録

上部尿路結石患者と健常人の尿中の蓚酸カルシウム結晶量と尿中諸物質濃度を測定し, 重回帰分析することによりそれらの影響力を検討した. 1. 結石患者の尿では説明変数としては蓚酸, ナトリウム, カルシウム, 尿酸, マグネシウムが採択されそれぞれの偏相関係数は0.67, 0.28, 0.18, 0.18, -0.10であった. CaOX結晶量の回帰式は CaOx Crystal 量 (×106μm3/ml)=3.59×102Ox(mM/l)+4.72×10-3Ca(mM/l)+4.52×10-3Na(mM/l)+2.51×10-4UA(mM/l)-2.39×10-2Mg(mM/l)-1.65で, 重相関係数は0.759であった. 結石患者の尿では結晶形成は修酸濃度に最も依存し, ナトリウム, カルシウム, 尿酸が結晶形成促進因子として働き, マグネシウムが阻止因子として作用していた. 2. 健常人の尿では説明変数として蓚酸と無機燐が採択されそれぞれの偏相関係数は0.51, -0.24であった. CaOX結晶量の回帰式は CaOx Crystal 量 (×106μm3/ml)=1.91×10-2Ox(mM/l)-3.43×10-4P(mM/l)+0.29で, 重相関係数は0.525であった. 健常人の尿でも結晶形成は蓚酸濃度に依存していたが, 他に促進因子は明らかではなかった. 阻止因子としての作用は無機燐に認められた. 健常人では結石患者に比べ重相関係数も低く, 結晶形成に他の不明の多くの諸物質の関与が推察された.

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