日本泌尿器科学会雑誌
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薬物動態からみたパパベリンテストの意義
川西 泰夫木村 和哲古川 敦子宮本 忠幸田村 雅人沼田 明湯浅 誠今川 章夫香川 征
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1991 年 82 巻 6 号 p. 961-966

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抄録

20例のインポテンス患者に塩酸パパベリンを末梢静脈と海綿体それぞれから投与しその末梢血での推移, 海綿体血での推移を検討した. 塩酸パパベリンの測定は高速液体クロマトグラフィによった. 海綿体内へ投与した場合, 末梢血の最大濃度は7.7ng/mlであり末梢静脈に投与した場合の24.0ng/mlよりも低値であった. また, 最大血中事濃度に達する時間は末梢静脈投与の場合と比較し海綿体投与の場合がより長くかかった. 塩酸パパベリンの海綿体投与で勃起した6例と勃起しない14例で末梢血の塩酸パパベリン濃度は差を認めなかった. 勃起した症例の海綿体血塩酸パパベリン濃度は5分後, 3.42μg/ml, 10分後2.69μg/ml, 20分後1.18μg/mlであり, 全投与量の40mgと比較し低い濃度であった.
海綿体に投与された塩酸パパベリンは平滑筋を弛緩させ, 陰茎外へ流出し, 海綿体血中事濃度は1μg/ml程度まで低くなる. そしてその低いレベルが維持されて勃起が維持されるものと考えられる. 塩酸パパベリンは海綿体に投与されて勃起の発現時には流入系と海綿体の両方に, 勃起の維持期には海綿体平滑筋に作用して流出路をブロックするように作用していると考えられる.
すなわち塩酸パパベリンテストで実際に勃起が発現するか否かは流入系と, 陰茎海綿体平滑筋機能の両者に左右され, 塩酸パパベリンテスト単独ではそれらを鑑別できない.

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