日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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ISSN-L : 0021-5287
82 巻, 6 号
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  • 久住 治男
    1991 年82 巻6 号 p. 865-870
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 高井 計弘
    1991 年82 巻6 号 p. 871-880
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    高率に微小腺癌を発生させる前立腺化学発癌モデルに高脂肪食を摂取させ, 顕在癌への進展の有無を検討した. すなわち6週齢 Fischer 344ラットに0.75ppm ethinyl estradiol 含有食を3週間摂取させ, その後2週間は基本食に戻した. 基本食に変更後の3日目に3,2′-dimethyl-4-amino-biphenyl 50mg/kgを皮下投与した. これを50週かけて10回繰り返したのち, 正常量脂肪食と高用量脂肪食を摂取させる群に分け, 80週で屠殺し, 前立腺の組織学的検索を行った. 発癌モデル群中, 正常量脂肪食群と高用量脂肪食群では異型過形成の発生率は各々15.4% (4/26), 44.8% (13/29) であり, 腺癌の発生率は34.6% (9/26), 20.7% (6/29) であった. 腺癌の発生はむしろ正常量脂肪食群で有意に高率であったが, いずれかの病変のみられた動物数は2群間に有意の差はみられなかった. 即ち前立腺発癌における高脂肪食のプロモーター作用を明白には確認できなかった.
    このため, より確実な発癌モデルが不可欠と思われ, 上記の発癌モデルを一部修正し, 新たな前立腺化学発癌を試みた. すなわちC3H/Heマウスでは癌の発生は認めず, 異型過形成を25% (16/64) に認めたのみであり, 高率に自然発生前立腺癌を認めるというACI/Segラットでも, 癌の発生は8.1% (6/74) であった. どの実験でも, 顕在癌の発現は認められなかった. 有用な前立腺化学発癌モデルを作成するには, なお多くの研究が必要と思われた.
  • 石山 俊次
    1991 年82 巻6 号 p. 881-889
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1974年4月~1990年3月の16年間に自治医科大学泌尿器科学教室で経験した32例の職業性尿路腫瘍患者を対象として, 各症例の発癌物質曝露状況と発生した腫瘍の病理組織所見, 臨床経過, 予後との関係を中心に詳細な検討を行った. 症例は全て染料工場従業員で, 発癌性芳香族アミンの製造あるいは取扱いに従事していた. 製造工程と取扱い工程では発癌物質の曝露量にかなりの差があったと考えられ, 32例を携わった作業内容により製造群と取扱い群の2群に分け検討すると, 製造群では high grade 腫瘍の発生数, 死亡数とも取扱い群より有意に高かった. また重複癌や特異な病理組織像を呈する腫瘍の発生も製造群にのみみとめられた. これらの所見は発癌物質のdose-effectの現れと考えられ, 発癌性芳香族アミンの製造に従事した者では, 今後の経過観察, 治療方針の決定について特に注意が必要である.
  • 特に血清1α,25-(OH)2D濃度の変動とその臨床的意義について
    岡本 知士, 藤岡 知昭, 堀内 三郎
    1991 年82 巻6 号 p. 890-899
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近年, 活性型ビタミンDが細胞分化や癌化の制御にある種の役割を演じていることが明らかとなり, さらに最近では活性型ビタミンDが種々の癌遺伝子の増幅に関与しているという報告が相次ぎ, 活性型ビタミンDと癌細胞との関わりが注目されている.
    本研究では腎癌患者における血清中のビタミンD代謝物の濃度を, 同年齢の対照群と比較した. 血清を有機溶媒で抽出し, 高速液体クロマトグラフィーにて分離精製後, 25-(OH) DについてはビタミンD欠乏ラット血清を結合蛋白とした competitive protein binding assay で, 1α,25-(OH)2Dについてはヒナ小腸粘膜より精製された receptor を用いた, radioreceptor assay で測定した. 血清1α,25-(OH)2D濃度は, 対照群では28.9±5.2pg/mlであったのに対し, 腎癌群では19.7±5.9pg/mlと有意に低値を示した(p<0.01). 血清25-(OH)D濃度は両群で有意差を認めなかった. また, 腎癌群のなかでも stage III+IV群, T3+T4群, rapid type ではそれぞれ, stage I+II群, T1+T2群, slow type と比較して有意に低値を示した (p<0.01, p<0.05, p<0.01). さらに腎癌群では, クレアチニンクリアランスと血清1α,25-(OH)2D濃度との相関を求めたが両者に有意の相関は認めなかった.
    これらの実験結果と, 腎癌の生物学的特性及び1α,25(OH)2Dの癌細胞に対する多様な作用について若干の文献的考察を行ったところ, 腎癌患者における血清1α,25-(OH)2D濃度の測定が腎癌の進行や再発に関与する多くの因子を解明するひとつの糸口となることが示唆された.
  • 黒住 武史, 鯉川 弥須宏, 八木 拡朗, 尾本 徹男, 岩田 康
    1991 年82 巻6 号 p. 900-906
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    10例の膀胱上皮内癌 (primary type 6例, secondary type 4例, 男: 女7: 3) に対してBCG膀注療法 (15回3例, 8回7例) を施行した. 尿細胞診は, 膀注4~5回後より class III以下となり, 膀注8回後の治療効果判定では全例有効であった. 再発までの治療効果持続期間は, 膀胱全摘時にリンパ節転移のみられた症例1を除くと, 2例は夫々, 15ヵ月と17ヵ月, 再発疑いの1例は7ヵ月であり, 残りの6例は現在まで再発はみられていない. BCG膀注による抗腫瘍効果の作用機序を光顕ならびに電顕にて検討した結果, 一つは, 急性結核性膀胱炎による腫瘍細胞の剥離脱落であり, もう一つは macrophageを介する何らかの機序も関与することが推測された.
    BCG膀注による副作用や合併症については, 自験例では従来の報告に比してかなり高度なものがみられ, 膀胱刺激症状や発熱以外に膀胱容量も低下し, 2例は萎縮膀胱と診断して膀胱全摘術やS状腸膀胱拡大術を施行した. VURも6例にみられた. このように, 膀胱上皮内癌に対するBCG膀注は, 全例にかなりの治療効果をえることが出来たが, 効果持続期間の短かいものもあり, また, 副作用や合併症に関してもかなり重篤なものもあるので, 適切な予防や処置を行うと共に, 慎重な経過観察が必要と思われた.
  • 今西 正昭, 禰宜田 正志, 池上 雅久, 西岡 伯, 石井 徳味, 植村 匡志, 国方 聖司, 神田 英憲, 松浦 健, 秋山 隆弘, 栗 ...
    1991 年82 巻6 号 p. 907-913
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近畿大学のシクロスポリン (CsA) を中心とした多剤併用による初期免疫抑制法は, 時期により大きな変遷がみられ, 3群にわけられる. この3群間の検討により, 術後早期の3ヵ月間における最適な初期免疫抑制法につき考察をおこなった. 免疫抑制法は, 1群が25例でCsA (12mg/kg/day)+プレドニゾロン (Pred) の2剤併用法であり, II群が16例でCsA (6mg/kg/day)+Pred+ミゾリビン (MIZ) あるいはアザチオプリン (AZA) の3剤併用法である. III群は18例であり, II群よりCsAを4mg/kg/day増量し, CsA (10mg/kg/day)+Pred+MIZ あるいはAZAの3剤併用法である.
    各群において術後1ヵ月, 2ヵ月, 3ヵ月目の腎機能に有意差は認めず, また, 3時間の比較においても術後1ヵ月, 3ヵ月目の腎機能に有意差は認めなかった. 拒絶反応は, II群の平均回数が有意に多く, また, その程度もI群・III群と比較すると強いものであった. 術後3ヵ月間の合併症はCsAの腎毒性がI群に1例認められた. 肝機能障害はIII群のみ認められなかった. 高血圧はI群に高率に認められ, 降圧剤によるコントロール不良なものも多く認めた. 合併症はIII群に少なくI群に多く認められた.
    これらのことより, CsA 10mg/kg/dayより開始する3剤併用療法は3群中最適な初期免疫抑制法と思われた.
  • 藤井 敬三, 森川 満, 水永 光博, 岡村 廉晴, 橋本 博, 金子 茂男, 徳中 荘平, 八竹 直, 藤沢 真
    1991 年82 巻6 号 p. 914-921
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年1月から1990年7月までに, 旭川医科大学泌尿器科で, 下部尿路の悪性疾患に対する根治的手術に際し, 回腸導管造設術を48例に施行した. 48例中, 長期間の追跡 (平均34.1ヵ月) の可能であった, 42例72腎単位のうち, 6例 (14.3%), 7腎単位 (9.2%) に腫瘍の再発, 転移が原因ではない回腸尿管吻合部狭窄の発症を認めた. これら6例中, 4例5腎単位に対して経皮的治療を試みた. 治療方法は, まず経皮的腎瘻術の後, 腎瘻側よりガイドワイヤーを狭窄部に通過させ先端をストーマ外まで誘導してから, 拡張療法を行なった. 拡張方法はカテーテルダイレーションを1例2腎単位に計4回行ない, バルーンカテーテルダイレーションを2例2腎単位に計3回行なった. 各々拡張療法後に9ないし12Frのステントを約3~8週間留置した. 3例4腎単位については平均10ヵ月の経過観察期間で再狭窄の発生もなく, 良好な結果を得ている. 他の1例は狭窄部にガイドワイヤーを通過させることができず, 経皮的拡張は不成功に終った. 手術による重篤な合併症は1例も経験しなかった. 本治療法は手術侵襲や術後の合併症も少なく, 繰り返して行なうことも可能であることから, 観血的治療に先立ち, まず第一に試みられるべき有力な治療法と考えられた.
  • 小山 幸次郎
    1991 年82 巻6 号 p. 922-931
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    両側下腹神経を切断し, ケタミン, クロラロースで麻酔したイヌ31頭を用い, 嗅結節, 外側嗅索電大刺激による骨盤神経膀胱枝, 陰部神経尿道枝の遠心性活動, 膀胱容量に対する効果を検討し, 次の結果を得た.
    1) 嗅結節の電大刺激により, 骨盤神経活動の促進と, 陰部神経活動の抑制が同時に得られたが, 逆の効果は認められなかった. 2) 上述の効果をひき起こす刺激の頻度は, 10, 20, 50, 100Hzで, 5Hzでは効果が認められなかった. 3) 5秒に一回の群パルス刺激で測定した骨盤神経活動促進の潜時は100msec前後で, 最初の反応にひき続いて, 2~3Hzの漸減する周期性群発射が引き起こされた. この時, 陰部神経活動は骨盤神経活動とは逆位相の反応を示した. 4) 外側嗅索の刺激では反応は認められなかった. 5) 視床下部, 中脳, 橋での部分切断実験から, 嗅結節刺激により起こる下行性興奮は, 内側前脳束を経由して視床下部外側野に達し, さらに中脳の腹側を経由して橋排尿中枢へと達し, 膀胱, 尿道反応を発現すると推察された.
  • 藤井 昭男, 岡 伸俊, 宮崎 茂典, 樋口 彰宏, 伊藤 登, 岡本 恭行, 田中 浩之, 広岡 九兵衛, 島谷 昇, 井上 隆郎, 立花 ...
    1991 年82 巻6 号 p. 932-939
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    計測可能病変を有する尿路上皮腫瘍転移例31例に対し, 第1日目に methotrexate 20mg/m2, vincristine 0.6mg/m2, cyclophosphamide 500mg/m2, adriamycin 20mg/m2, bleomycin 30mgを, 第2日目にcisplatinum 50mg/m2を投与し, これを計測可能病変が進行と判定されるまで3週間ごとに繰り返すMVP-CAB療法を行った. その結果, CR4例 (13%), PR17例 (55%), NC2例 (6%), PD8例 (26%) が得られ, その有効率は68%であった. 臓器別および病理組織別有効率は原発巣69%, 肝67%, 肺73%, リンパ節67%, 骨22%, 移行上皮癌71%, 扁平上皮癌33%であった. 臨床効果別生存期間中央値はCR例が32ヵ月, PR例が11ヵ月, NC例が3ヵ月, PD例が6ヵ月で, CRおよびPR例において予後の延長が認められた. PR例における本療法の有効持続期間および施行回数中央値は6ヵ月, 6 cycle であった. 本療法の主な副作用は肺線維症と骨髄機能障害であった. 2例 (73歳, 81歳) が肺線維症のため死亡したが, 以後70歳以上の高齢者や肺機能障害例には初回からBLM投与を中止することにより, 本症の発生を防止し得ている. 22例 (71%) に白血球数2,000/mm3未満の低下, 7例 (23%) に血小板数5×104/mm3未満の低下が認められたが, 骨髄機能障害による死亡例は認められなかった.
  • 仙賀 裕, 菅野 ひとみ, 熊谷 治巳, 里見 佳昭, 岸田 健, 福田 百邦, 中橋 満, 宮井 啓国, 穂坂 正彦, 田中 祐吉, 三杉 ...
    1991 年82 巻6 号 p. 940-946
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    全割面標本を作製した腎癌60例に対し, 肉眼的, 組織学的に main tumor と satellite tumor nodules (STN) を検討した. STNは一般化された用語ではないが, main tumor から離れた腎実質内に存在する腫瘍細胞の集団をSTNと判断し腫瘍血栓は除いて考えた. 60例中28例 (46.7%) にSTNを認め, main tumor との位置関係から3型に分類可能であった. main tumor の大きさが10cm以上でもSTNのない例があり, 逆に2.5cm以下でも認める例が存在した. high grade, high stage の症例にSTNを多く認めた. 腎実質保存手術が可能となる症例は low grade, low stage でSTNは存在しても1個以下の例に限られると思われたが, STNが1個の例は少ないことがわかった. low grade, low stage であれば, main tumor が大きくても充分に正常腎実質が残せるならば, 腎実質保存手術は可能であると思われた. 腎摘術に比較し困難な術中, 術後の管理と局所再発という危険を残してまで腎実質保存手術を行うことについて, 果たして利点があるのか疑問が残った. 腫瘍血栓は腎実質保存手術を行ううえでSTNと同様に扱う必要もあり, 腫瘍血栓の正常腎実質内における存在様式については今後の検討を要すると思われた.
  • 膿尿および症候性尿路性器感染症との関係について
    合谷 信行, 高橋 公太, 田辺 一成, 長内 佳代子, 朝比奈 義仁, 大場 忍, 海老原 和正, 中村 倫之助, 中沢 速和, 東間 紘 ...
    1991 年82 巻6 号 p. 947-954
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1987年1月から12月までの1年間に東京女子医大腎臓病総合医療センターの外来を6ヵ月以上通院し, 3回以上の細菌尿が検出された腎移植患者42名において, 細菌尿の実態および膿尿の有無, さらには症候性尿路性器感染症との関係について検討を加え, 次の結果を得た. (1) 42例のうち尿中分離菌回数は, 5回以下: 19例, 6~10回: 18例, 11回以上: 5例であり, 同一患者から同一菌種が頻回に分離される傾向にあった. 分離菌は Enterobacter, Enterococcus, Serratia, E. coli が多かった. (2) 細菌尿に膿尿を伴ったのは42例中33例 (79%) であり, また症候性感染症に罹患したのは12例 (29%) であった. 膿尿を伴わない細菌尿が9例 (21%) にみられたが, これらの症例では症候性感染症を示さず, また2年後の予後を検討した結果では, 細菌尿が悪影響を及ぼしていないと考えられた. (3) 持続する膿尿を伴った細菌尿を呈した16例のうち, 9例 (56%) が症候性感染症を示し, このうち1例に移植腎VUR, 1例に自己腎VURがみられた. また他の1例は, 1年後に間質性肺炎で死亡しており, 過度な免疫抑制が示唆された.
    以上より, 腎移植患者における膿尿を伴った細菌尿では, 症候性尿路性器感染症が発症する頻度が高く適切な化学療法が必要とされ, さらにこのような細菌尿が持続する場合には, 尿路の器質的疾患, または過度な免疫抑制がないかどうか注意が必要である. 膿尿を伴わない細菌尿には化学療法は必要なく, 経過観察のみで充分である.
  • 金子 茂男, 八竹 直, 宮田 昌伸, 水永 光博, 渡部 嘉彦, 谷口 成美, 井内 裕満, 松田 久雄, 栗田 孝
    1991 年82 巻6 号 p. 955-960
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    陰茎硬度周径連続測定法を本邦において臨床応用するにあたり, 正常人における夜間陰茎勃起現象の解析とその安全性について検討した.
    本邦正常成人16名 (年齢24~44歳, 平均31.1歳) を対象とし, 陰茎硬度周径連続測定にはRigiScan™を用いた. 測定部位は環状溝から約5mm陰茎根部寄り (遠位側) と根部 (近位側) の2箇所である. 陰茎の平均最小周径は遠位側で62.7mm, 近位側で65.4mmであり, 勃起時の平均最大周径は遠位側で102.5mm, 近位側で108.6mmであった. 周径が10mm以上のびたときを勃起とすると約1時間20分に1回の頻度で勃起が生じており, この勃起の平均持続時間は遠位側で23.0分, 近位側で38.3分であった. 10分以上持続した硬度の最大値は遠位側で82.9%, 近位側で85.4%であった. 1例に測定部位の一部に発赤を認めたが処置を必要とするような副作用はなかった. RigiScanによる陰茎硬度周径連続測定は簡便, 安全かつ客観的に夜間陰茎勃起現象をとらえることができ, 今後勃起不全の診断, 治療効果の判定に役立つものとおもわれる.
  • 川西 泰夫, 木村 和哲, 古川 敦子, 宮本 忠幸, 田村 雅人, 沼田 明, 湯浅 誠, 今川 章夫, 香川 征
    1991 年82 巻6 号 p. 961-966
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    20例のインポテンス患者に塩酸パパベリンを末梢静脈と海綿体それぞれから投与しその末梢血での推移, 海綿体血での推移を検討した. 塩酸パパベリンの測定は高速液体クロマトグラフィによった. 海綿体内へ投与した場合, 末梢血の最大濃度は7.7ng/mlであり末梢静脈に投与した場合の24.0ng/mlよりも低値であった. また, 最大血中事濃度に達する時間は末梢静脈投与の場合と比較し海綿体投与の場合がより長くかかった. 塩酸パパベリンの海綿体投与で勃起した6例と勃起しない14例で末梢血の塩酸パパベリン濃度は差を認めなかった. 勃起した症例の海綿体血塩酸パパベリン濃度は5分後, 3.42μg/ml, 10分後2.69μg/ml, 20分後1.18μg/mlであり, 全投与量の40mgと比較し低い濃度であった.
    海綿体に投与された塩酸パパベリンは平滑筋を弛緩させ, 陰茎外へ流出し, 海綿体血中事濃度は1μg/ml程度まで低くなる. そしてその低いレベルが維持されて勃起が維持されるものと考えられる. 塩酸パパベリンは海綿体に投与されて勃起の発現時には流入系と海綿体の両方に, 勃起の維持期には海綿体平滑筋に作用して流出路をブロックするように作用していると考えられる.
    すなわち塩酸パパベリンテストで実際に勃起が発現するか否かは流入系と, 陰茎海綿体平滑筋機能の両者に左右され, 塩酸パパベリンテスト単独ではそれらを鑑別できない.
  • 核異型 (nuclear anaplasia) と構築異型 (structural atypism) の検討
    熊本 悦明, 塚本 泰司, 梅原 次男, 原田 昌興, 島崎 淳, 布施 秀樹, 大島 博幸, 竹内 弘幸, 吉田 修, 岡田 謙一郎, 斉 ...
    1991 年82 巻6 号 p. 967-975
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の病理組織学的検討に関してはこれまで前立腺癌の構築の異型 (SAT), 分化度が中心になってきた. 本論文では核の異型 (NAN) の臨床的意義を検討した. さらに米国における前立腺癌の病理組織学的所見との比較も試みた.
    (1) NANのgradeは, SAT grade と同様に stage の進行に伴いNAN1の割合が減少し, NAN3の割合が増加した. 同様の関係は〈NAN+SAT〉grade と stage の間においても認められた.
    (2) NANとSATの grade は互いに相関したが, 全体の31.5%の症例では互いの grade が一致せず, NANとSATの grade が補完的な関係にある症例が存在した. Gleason's pattern と NAN grade との関係の検討においても, SAT grade と NAN grade との関係同様の結果が得られた.
    (4) SATをさらにNANの grade で症例を細分化し, NANの grade の癌死率に対する影響を検討してみると, 明らかに経過不良な症例の存在が認められた. このことは, NANの grade 検索がSATの grade のみの検索以上に症例の臨床経過を詳細に予測し得ることを示していた.
    以上の結果から, 核異型 (NAN) の検索は組織構築の異型 (SAT) の検索とは異なった情報を与える可能性があり, 臨床的に意義があると推測された.
    (5) 今回の症例での病理組織学的所見を ACS study, VACURG study におけるそれと比較すると, 本邦例の方が中あるいは低分化型あるいは Gleason's sum 9-10の占める割合が高かった.
  • 福井 巌, 小松原 秀一, 赤座 英之, 坂下 茂夫, 赤阪 雄一郎, 鳶巣 賢一, 山内 民男, 出口 修宏, 古畑 哲彦, 河合 恒雄
    1991 年82 巻6 号 p. 976-983
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1985年6月より1987年12月までの2年7ヵ月間に9施設を受診したステージIIとIIIの睾丸腫瘍を対象として, 寛解導入化学療法におけるエトポシドを含まないPVB, VAB-6, およびBVP療法 (A群) とエトポシドを含むPEB療法 (B群) の有効性を無作為比較試験で検討した. 登録された34症例のうち, ステージIIA, IIIO, IIIAの軽症群は10例 (セミノーマ1例, 非セミノーマ9例) で, IIB, IIIB2, IIICの重症群は24例 (セミノーマ9例, 非セミノーマ15例), そして組織型はセミノーマ10例, 非セミノーマ24例で, これらの頻度はA, B両群間で有意差はなかった. A法を割り付けられた場合, いわゆるPVB, VAB-6およびBVP療法の中から1つを各施設が任意に選択した.
    導入化学療法単独による治療成績は, 完全寛解 (CR) がA群35%に対し, B群43%, 部分寛解 (PR) が45%に対し50%とA群よりB群がやや良好であったものの, 有意差ではなかった. ステージ別, 組織型別に見ても, CR率には同様に有意な差はなかった. ただし, 非CR症例に対するサルベージ治療の奏効率はA群の61%に対しB群は88%とかなり良好であった. これは, B群の方が導入化学療法の効果が良好で, かつサルベージ手術の奏効した症例の頻度もB群の方に高かったためである. 3年生存率はA群76%に対し, B群100%であった. 副作用のうち骨髄抑制と脱毛の頻度はB群に有意に高いが, 末梢神経障害はA群に有意に高かった. 以上より, 導入化学療法としてはPVB, VAB-6, BVP療法よりPEB療法のほうがよいと考えられた.
  • 藤本 直浩, 小津 堅輔, 稲富 久人, 岡村 知彦, 杉田 篤生
    1991 年82 巻6 号 p. 984-989
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    泌尿器科領域の悪性腫瘍患者において免疫比濁法による血漿フィブロネクチン (pFN) の測定を行い, 以下の結果を得た.
    1. 治療前の患者におけるpFN値. 1) control群では, 379±60.6μg/ml (平均±SD), 患者群では, 356±123.7μg/mlであり, 両群間に有意差を認めなかった. 2) 患者を転移の有無により分けて検討してみると, 転移を有しない群では, 371±132.7μg/ml, 転移を有する群では, 320±92.9μg/mlであり, 両群間に有意差は認められないものの, 転移を有する群において低値を示す傾向であった. 3) 予後良好群と不良群に分けて検討すると, 予後良好群では, 410±157.2μg/ml, 予後不良群では, 300±107.8μg/mlであり, 予後不良群は, 予後良好群に比べ有意に低値を示した (p<0.05). また control 群を加えた3群間の比較でも, 有意に低値であった (p<0.05).
    2. 主として high stage であるために, 保存的治療を施行中の患者におけるpFN値. 1) rapid progression 群では, 287±64.4μg/ml, slow progression 群では, 372±43.3μg/mlであり, rapid progression 群は, 有意に低値を示した (p<0.01). また, control を加えた3群間の比較でも rapid progression 群は他の2群に比べ有意に低値を示した (p<0.05). 以上よりpFN値が低値を示す場合, 悪性腫瘍の進行が速く, 予後不良であることが推測された.
  • 寺田 洋子, 岡沢 敦彦, 内田 健三, 上谷 恭一郎, 弓削 順二, 羽山 忠良
    1991 年82 巻6 号 p. 990-993
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腫瘍核出術を施行した両側同時性腎細胞癌の1例を報告した. 症例は, 58歳の男性で, 肝機能障害の画像診断中に発見された両腎上極の小腫瘍により当科を紹介された.
    静脈性腎孟造影では, 腎上極に腫瘤の所見があった. 選択的腎動脈撮影では, 小腫瘤内の血管新生が認められた.
    経腰的左腎動腫瘍核出術施行. 手術標本は, 偽被膜を有し, 3.5×3×2.5cm (29g), 病理組織診断は, 腎細胞癌 clear cell type, grade 1, INFα. 7週後, 右腎上極の偽被膜を有する3×2.5×2cm (16g) の腫瘍を核出, 病理組織診断は, 腎細胞癌 clear cell type, grade 2, INFα. 2度目の手術より21ヵ月の現在, 臨床的には再発所見なし. 腎機能正常 (CCr 110ml/min).
    文献上では, 両側同時性腎細胞癌の両側腎保存手術症例の11例で臨床経過が報告されていた. 自験例を含め12例の検討を行った.
  • 井内 裕満, 水永 光博, 宮田 昌伸, 金子 茂男, 徳中 荘平, 八竹 直, 沖 潤一, 東 百絵
    1991 年82 巻6 号 p. 994-997
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Menkes' kinky hair disease は, 痙攣, 毛髪捻転などを特徴とし, 伴性劣性遺伝の形式を取る予後不良な先天異常疾患である. 近年, 本症は多発膀胱憩室をはじめとする泌尿器科的異常を合併することが知られてきた. 症例は6歳男子. 痙攣, 毛髪異常, 血清銅値低下を認め, 本症と診断された. 排尿は自排尿不能のため, 介助者による手圧排尿を行っていた. 1989年8月8日, 肉眼的血尿と排尿時痛を主訴に当科紹介となった. X線検査所見より, 右腎サンゴ状結石と多発膀胱憩室を合併した本症と診断した. 全身状態から積極的治療は行うことができず, 強く疑われた神経因性膀胱に対し, 間欠導尿などの保存的治療を行い経過観察中である.
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