日本泌尿器科学会雑誌
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雌イヌの膀胱, 尿道に対するα1-アドレナリン刺激剤の尿水力学的作用
高橋 悟森山 信男本間 之夫東原 英二阿曽 佳郎山崎 隆三郎奥山 茂
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1991 年 82 巻 8 号 p. 1292-1298

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抄録

α1-アドレナリン刺激剤は尿道のα1-アドレナリン受容体を介して尿道の筋緊張を高めることが知られている. 一方, 腹圧性尿失禁では尿道閉鎖圧の低下がその一因とされている. 今回, 雌の成犬における新しい選択的α1-アドレナリン刺激剤 (midodrine hydrochloride: 以下ミドドリン) の膀胱, 尿道に対する尿水力学的作用を検討し, 尿失禁においてα1-アドレナリン刺激剤が臨床的に有用性を期待しうるかを検討した. Chloralose 静脈麻酔下にミドドリン0.03, 0.1, 0.3, 1.0mg/kgの各用量を大腿静脈より投与し, 尿水力学的検査と外尿道括約筋筋電図測定を施行した. 尿道壁が主に平滑筋で構成される尿道近位部の最高閉鎖圧は, ミドドリン0.03mg/kg投与で既に上昇を認め, 以後用量依存的に有意な上昇を認めた. 機能的尿道長, 外尿道括約筋部尿道内圧, 最大膀胱内圧, 最大膀胱容量, 膀胱コンプライアンスは今回の投与量では有意な変化を認めなかった. 平均血圧はミドドリン0.3mg/kg投与時点以後, 有意な上昇がみられた. 外尿道括約筋はミドドリン投与により筋電図活動が一過性に増加したが, その活動は膀胱収縮と同期して停止した.
以上, 選択的α1-アドレナリン刺激剤であるミドドリンは, 雌生体犬の主に尿道近位部の閉鎖内圧を特異的に高め, その作用は血圧上昇の認められる用量の1/10の投与量から出現することより, 臨床的に腹圧性尿失禁に有用である可能性が示唆された.

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