日本泌尿器科学会雑誌
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膀胱腫瘍術前照射全摘症例の核DNA量解析
照射前の DNA ploidy と照射前後の DNA ploidy変化と治療効果及び予後との関係
豊田 健一永森 聡柏木 明野々村 克也富樫 正樹小柳 知彦野島 孝之井上 和秋
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1992 年 83 巻 12 号 p. 2050-2057

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抄録

Flow cytometry (FCM) を用いて, 術前照射後, 根治的膀胱全摘術を施行した膀胱癌 (移行上皮癌) 30症例の照射前と全摘後の核DNA量を解析し, 照射前の DNA ploidy と照射前後の DNA ploidy 変化が治療効果と予後とを予測する指標となりうるか否かについて検討した.
1) 照射前の DNA ploidy は DNA diploid (以下 diploid) 8例, DNA aneuploid (以下 aneuploid) 22例で, 照射前 diploid は照射後全て diploid を示し, 照射前 aneuploid は22例中18例が照射後 diploid に変化し, 4例は aneuploid で変化なかった.
2) 照射前 diploid 症例は照射前 aneuploid 症例に比し, 照射後有意に高率に腫瘍が消失し (p<0.05), 8例全例NEDで生存していた.
3) 照射前の ploidy に関わらず, 腫瘍消失例や diploid 腫瘍残存例は, 全例生存しているが, それに比較して, 照射後も aneuploid 腫瘍が残存した4例は有意に予後不良であった (p<0.01).
4) 腫瘍残存例では, 照射前 aneuploid 17例中13例が照射後 diploid に変化したが, その内, 5例が癌死し, 必ずしも予後良好とはいえなかった.
以上, 照射前 diploid は腫瘍の消失率も高く, 治療効果, 予後とも良好であり, 照射後 aneuploid 腫瘍の残存例と diploid に変化した例の一部は予後不良であることから, 照射前の DNA ploidy 及び照射前後の DNA ploidy 変化の解析によって, 術前照射例の治療効果および予後の予測はある程度可能な結果であることが示唆された.

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