日本泌尿器科学会雑誌
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二次性副甲状腺機能亢進症に対する副甲状腺全摘除術および自家移植術の臨床的検討
溝口 裕昭野村 芳雄矢野 彰一中川 昌之寺田 勝彦高橋 真一今川 全晴奈須 伸吉緒方 二郎藤原 亨
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1992 年 83 巻 12 号 p. 2062-2069

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抄録

1983年4月から1991年9月までの8年6ヵ月間に当科にて二次性副甲状腺機能亢進症と診断し, 副甲状腺全摘出, 自家移植術を施行した27例について臨床的検討を加えた. 症例は男13, 女14例で, 31~61歳, 平均年齢43歳. 透析期間は60~202ヵ月, 平均126.4ヵ月であった. 臨床症状として骨痛19例, 関節痛18例, 身長低下7例, 皮膚掻痒3例, 筋肉痛, 眼球結膜の充血がそれぞれ2例, 腫瘤形成, 上顎骨の変形がそれぞれ1例にみられた. 骨X線所見として, 手指骨の骨膜下吸収像および頭蓋骨の salt and pepper をそれぞれ26例, rugger jersey spine 15例, 異所性石灰化11例, 病的骨折4例を認めた. 術前血液生化学検査では血清Ca10.6±0.9mg/dl, 血清リン7.7±1.9mg/dl, ALP1, 237±889IU/L, c-PTH42.6±19.3ng/mlといずれも上昇していた.
全例全身麻酔下に副甲状腺全摘出術, 前腕への自家移植術を行った. 4腺摘出23例, 3腺摘出4例で, 全例術後24時間以内に血清カルシウム値は著明に低下した. 平均摘出総重量は4.48g. 術前局在診断率は超音波94%, CT90%. 術後2週目に対側に比べ移植側肘静脈血のPTH高値を検出, 移植片生着を確認した. 術後の自覚症状よりみた臨床的効果は著効12例, 有効11例, 不変4例. 術後1年以降で骨膜下吸収像よりみたX線学的効果は著効11例, 有効11例, 不変1例. 両効果はよく相関した. 病理組織学的には副甲状腺組織はび漫性過形成10例, 結節性過形成12例. 混在型4例. 骨組織像は線維性骨炎型16例, 軽度変化型5例, 混在型2例で骨軟化症型は見られなかった. 骨組織像から臨床的効果, X線学的効果を検討すると軽度変化型に比べ線維性骨炎型に著効例が多い傾向がみられた. 摘出副甲状腺総重量と術前c-PTHとの間に正の相関関係を認めた. 術前ALPは intact-PTH と相関し, 軽度変化型に比べ線維性骨炎型において有意に高値であった. 2例に移植副甲状腺組織の増殖を伴う再発を認め, 移植片亜全摘術を施行した.
以上から二次性副甲状腺機能亢進症に対して副甲状腺全摘術による臨床効果を高めるためには, 1g以上の副甲状腺の過形成組織を認める症例を選ぶことが必要で, その補助診断としては術前c-PTH値が有用であるへ1さらに手術適応の決定においては線維性骨炎の程度をX線学的および組織学的に術前に正確に評価することも重要で, その補助診断としては術前ALP値が有用である.

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