日本泌尿器科学会雑誌
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腎細胞癌の臨床病理学的特徴と予後
遠隔転移・静脈腫瘍血栓・リンパ節転移に関与する因子の統計学的評価
高士 宗久坂田 孝雄中野 洋二郎長井 辰哉高羽 秀典田中 純二岡村 菊夫高村 真一金井 茂佐橋 正文村瀬 達良下地 敏雄三宅 弘治
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キーワード: 腎細胞癌, 予後, 遠隔転移
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1992 年 83 巻 3 号 p. 321-327

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抄録

腎細胞癌における近年の臨床病理学的特徴を明らかにし, 転移・静脈腫瘍血栓に影響を及ぼす因子を同定するために, 1980年から1989年までの間に治療を施した腎細胞癌99例について検討した. Robson 分類では stage I: 48例, stage II: 9例, stage III: 16例, stage IV: 26例であった. 近年, 検診や他疾患検索中に発見される症例が増加する傾向にあった. grade 1腫瘍に stage I症例, α型浸潤 (INFα) 症例が多かった. ロジスティクモデルによる単変量および多変量解析により, 静脈腫瘍血栓と組織学的異型度の2因子が遠隔転移に有意に関与していることが示された. 遠隔転移に対する静脈腫瘍血栓 (pV1b-pV2対pV0-pV1a) の相対危険度 (単変量解析) は4.7であり, 組織学的異型度 (grade 2, 3対 grade 1) の相対危険度は8.5であった. また静脈腫瘍血栓には, 腫瘍の局所浸潤 (pT3対pT2a-pT2 b: 相対危険度7.5) と浸潤増殖様式 (INFβ, γ対IFNα: 相対危険度11.5) が有意に関与していた. リンパ節転移に関与する因子は腫瘍の局所浸潤 (pT3対pT2a-PT2b: 相対危険度6.6) のみであった. 全症例の5年生存率は60.0%であった. stage 別では stage IとIIの5年生存率はそれぞれ91.8%, 64.8%であり, stage IIIとIVの3年生存率はそれぞれ32.8%, 23.6%であり, 静脈腫瘍血栓とリンパ節転移・遠隔転移が予後に関与していることが示唆された. 後期症例 (1985年~1989年) は前期症例 (1980年-1984年) に比べて生存率が高い傾向にあった.

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