1992 年 83 巻 3 号 p. 405-408
著者らは多房性腎嚢胞像を呈する両側性腎細胞癌の1例を経験した. 症例は42歳の女性で, 健康診断の超音波検査で偶然右腎に嚢胞性の変化を認められ, 精査を目的に当院を受診した. CT-scan, 腎動脈造影などから右腎腫瘍と診断し, 右腎摘出術を施行した. 病理学的には多房性嚢胞状腎細胞癌であった. 1年後, 左腎に小さい嚢胞性変化を認めた. 左腎腫瘍の診断で左腎部分切除術を施行した. 病理学的には右腎と同様に多房性嚢胞状腎細胞癌であった. 多房性嚢胞状腎細胞癌はその成因から数種類に分類される. その内, 多房性嚢胞状に発育した両側性腎細胞癌は著者らが調べ得たかぎりでは本邦においては本症例が第1例目である.