1993 年 84 巻 11 号 p. 2015-2022
原発性上部尿路上皮内癌 (CIS) の3例を報告し, 本邦例を含めて, 尿細胞診と摘出標本の mapping による病理学的研究の意義について検討した.
1. 上部尿路CISの臨床症状は血尿が最も多く, 特に肉眼的血尿としての出現率も高かった.
2. 尿管にCISを認める症例では, 尿管の狭窄あるいは閉塞から水腎症をきたす場合が多かった.
3. 診断には尿細胞診が有用で, 特にカテーテル尿あるいは洗浄液標本により診断率が高められた. また, 確定診断には繰り返しの尿細胞診陽性が得られるべきであると思われた.
4. 摘出標本の mapping による解析では, CISは多発性であり, dysplasia の併存を認めることが特徴的であった.
5. 治療は腎尿管全摘術が第一選択であるが, mapping によるCISや dysplasia の分布, およびCIS Grade の検討が, 術後経過観察の上でその有用性が期待される.