日本泌尿器科学会雑誌
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ヒト腎細胞癌組織から得たN-acetyl-β, D-glucosaminidase A (NAGA) の酵素学的特性の検討
正常組織との比較, 特に糖鎖構造に関する検討を中心として
吉田 謙一郎
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1993 年 84 巻 11 号 p. 2008-2014

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抄録

7例のヒト腎細胞癌組織より部分精製されたNAG Aについて個々にその酵素学的特性を検討し, 正常組織由来との違いを比較検討した. 腎細胞癌組織では合成グルコサミナイド基質に対し0.18±0.07mMのKm値を示し, 至適pHは4.7~4.9であり, 金属イオンに対し比較的安定であった. これらの特性は正常組織由来のそれと類似した. これに対しレクチンアフィニティークロマトグラフィーを用いた腎細胞癌由来のNAGAの糖鎖構造の検討では, 統計学的にみて正常組織由来の糖鎖構造とは違いがみられた. すなわち腎細胞癌由来では複合型糖鎖と最内側のアセチルグルコサミンにフコース残基を持たない混成型糖鎖が有意に増加したが, 高マンノース型糖鎖や最内側のアセチルグルコサミンにフコース残基を持つ混成型糖鎖は有意に低下した. これらの事実は腎細胞癌組織においてNAG A糖鎖のプロセシングに明らかな変化が起きていることを示したものと思われた.

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